「RSウイルス」園内感染の深刻な実態 実態調査に寄せられた検査を求める切実な訴え

現在、RSウイルス感染症が猛威を振るっており、子どもたちの健康に深刻な影響を及ぼす懸念の声が出されています。このRSウイルス感染症について保育現場の実態や見解を、大阪府保険医協会の評議員で、小児科医師である春本常雄氏が独自に調査に取り組まれましたので、お話を伺いました。聞き手は編集部です。

調査実施の経緯について教えてください。

現在、RSウイルス感染症が猛威を振るっています。特に、乳児が感染すると重篤な症状を引き起こすことがあり「乳児にとっては新型コロナウイルス以上に怖い存在である」と言っても過言ではありません。

幼稚園や保育園内で感染が広がっているものと推測されますが、RSウイルス迅速検査の保険適用は「入院患者、シナジス対象児、外来は1歳未満」に限られています。

保育園関係者や保護者から「RSウイルスの検査を行ってほしい」という依頼を受けることがありますが、どんなにRSウイルス感染症が疑わしくとも、外来の1歳以上児に対して、保険での検査を行うことができません。

1歳以上児の検査依頼を受けた場合の選択肢としては、①医療機関の持ち出しで検査を行う、②全額患者の自費で検査を行う、③検査そのものをしない、という3つが考えられますが、私はいずれの場合も好ましいとは思えません。よって、医療機関としては対応に非常に困るのですが、保育園や保護者も困っていると聞いておりました。

こうした背景のもとで、保育園におけるRSウイル ス感染症を巡る実情・実態・問題点を把握する必要があると考え、保育現場の状況・考えを直接調査することにしたのです。

府内の保育園から79園を対象に調査協力を依頼したところ、51園から回答をいただくことができました。回答率が高いのは関心が高いことを物語っています。

感染対策には検査が重要
傾聴すべき保育現場の声

調査結果の概要について教えてください。

最初に「この半年間に、保育園でRSウイルス感染症になった児がいましたか?」と尋ねました。

その結果「クラスの半分以上、もしくは全体で10人以上いた」との回答が49%と約半数に上りました(図1)。また、「上記ほどではないが、いた」との回答も31%に上り、合計すると80%の保育園でRSウイルス感染症とみられる園児がいたことがわかりました。

次に「この半年間に保育園でRSウイルスが1歳以上児から乳児に感染したと推測される例を経験しましたか?」と尋ねると、「経験した」が47%と半数近くに上っており、看過できないのではと考えました。

3点目に「RSウイルス感染症が疑わしい1歳以上児がいた場合、その保護者に検査をするよう促していますか?」と尋ねました。その結果、「保育現場で感染対策上必要であるので、促している」が39%と最も多くなりました(図2)。

また、「検査はしてほしいが、保険が利かないためやむを得ず促していない」という回答も24%みられました。保育園が医療制度をご存じであることは大変ありがたいことですが、本当は検査をしてほしいという葛藤があると思われます。

4点目に、「保育園での感染対策上、1歳以上児がRSウイルス感染症かどうかわかることは重要だと考えますか?」と聞いたところ、「とてもそう思う」が53%、「そう思う」が37%となり、合計すると90%の保育園が「1歳以上児がRSウイルス感染症かどうかわかることが重要である」と考えていることがわかりました。こうした現場の声は、医療従事者として傾聴すべきだと思います。

感染が早く分かれば現場は対策ができる

自由意見欄には、「熱はないが咳や鼻水などRS感染が疑われる園児が登園し、園内感染が広がっている」などの実態が数多く寄せられました。

検査については、「保険が利かないことを知らなかった」という声もあったうえで、「園としては感染対策上、RSウイルスかどうかわかることが重要で、対策も早く取れます」という意見が出されていました。

その上で、医療機関に対しては「ぜひ検査をしてほしい」「もう少し休ませて登園するよう指導してほしい」「保育園の感染状況も判断した指導を望みます」などの切実な要望が記されていました。

今回の調査結果を通じて保険適用議論を求めたい

調査結果を受けて、先生のご感想や、今後の思いなどを教えてください。

調査結果報告書
春本 常雄 氏

今回の調査で、RSウイルス感染症が凄まじい流行状態であること、そして保育現場は医療機関に対して検査を強く望んでいることが明らかとなりました。

RSウイルス感染症は乳児にとっては重症化しやすい疾患であり、命に関わってきます。感染が疑わしい幼児に対して、検査によって診断をつけることが出来れば、より適切な指導管理に繋がります。さらに、一定期間の休園指導を行うことで園内感染の拡大を防ぎ、重症化しやすい乳児への感染も減らす可能性があるのではないでしょうか。

よって、RSウイルス迅速検査の保険適用拡大は、子どもたちの健康を守るために、非常に大きな意味を持つものと考えます。

さらに、検査によって保育園や保護者側も、より適切な対策を取ることができます。また、RSウイルスの感染拡大は、保護者の就労を制限するなど社会的にも影響が大きいという点で考えても、検査の拡大で、迅速な対応を取ることにはやはり意義があると考えます。

「RSウイルス感染症の流行を何とかしたい」という願いは、保護者(患児)、保育園、医療機関の全ての立場で共通しています。そして、RSウイルス迅速検査の保険適用の問題は重要なカギになりえます。今回の私の調査によって、議論が進展する一助になることを期待しています。

是非とも保険医協会には、RSウイルスの問題について様々な働きかけを行っていただきたいです。


保険医新聞掲載

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