【理事長談話】緊急事態宣言を延長した当日、75歳以上高齢者医療費2倍化法案を強行採決 コロナ感染拡大下での強行採決に抗議する
大阪府保険医協会、高本英司理事長が下記の談話を発表しました。
報道関係各社 御中
連休が明けた5月7日、午前に緊急事態宣言の延長が出され、その日の午後に75歳以上高齢者の医療費2倍化法案が衆議院厚生労働委員会で強行採決され、自民・公明・維新・国民民主各党の賛成多数で可決された。法案の審議が4月8日から始まり、わずかひと月。しかも変異株のコロナ感染拡大が国民の脅威になり、医療崩壊も進む中、国民の命をどう守るのか、その対策について集中すべき時になぜ高齢者の命を危険にさらす法案採決なのか。今回の採決の強行に全く道理もなく強く抗議する。
採決を強行した衆議院厚生労働委員会では、連日コロナ感染拡大の対策が議論され、その合間を縫う形で各議員がこの法案の審議を進めた。今、厚生労働委員会がすべきことは、変異株のコロナ感染拡大を一刻も早く収束させ、人災とも言える罹患死を可能な限り減少させる議論のはずである。高齢者の命を左右する重要法案をいとも簡単に採決したことに、「賛成」した委員からでさえ「コロナ禍でこの厚生労働委員会で質疑すべきことはたくさんある」との発言もあったと聞く。自民・公明・維新・国民民主各党は、先の病床削減を柱とする医療法改定でも賛成しているが、国民の命を蔑ろにしているという非難を甘んじて受けるべきである。
国民の命と暮らしを守る政治に転換することを真剣に考えなければならない
法案審議では、厚生労働省が提出した資料には自己負担は受診に影響が出るとのデータもあった。まさにこの法案が高齢者の健康悪化を招く受診抑制につながり、そして命に関わる問題との指摘に、政府は何ら明確な根拠もないまま「年収200万円以上」の世帯は、必要な医療を受けるには支障がないと答弁するだけである。
本法案だけでなく、コロナ禍において国会で十分な審議もされないまま、国民の命と暮らし、そして日本の将来に関わる法案が次々採択されていくことに大きな不安を感じる。今一度、憲法25条の精神に立ち戻るべきである。
今年は秋までに必ず総選挙がある。新型コロナウイルス感染から国民の命と暮らしを守る政治に転換することを真剣に考えなければならない。大阪府保険医協会は今後も、医療・福祉・介護の充実のため地域から改善要求を粘り強く追及していく。
2021年5月10日
大阪府保険医協会
理事長 高本英司