【リレートーク「人を診る」①】 『大阪保険医新聞』2017年4月5日号1面より


羽田内科 (中央区)羽田 囘先生

ヒポクラテスの教えこそ「人を診る」原点

今年の日常診療経験交流会のテーマが「人を診る」に決まった。一般医療と専門医療、救急医療・高度医療・在宅医療などすべての医療の根っこが問われるテーマである。
医聖ヒポクラテスは自然治癒と全人的医療の大切さを説き、医学の扉を開いた。医学が危機に直面すると「ヒポクラテスに還れ」と呼ばれるのはこの為だ。ヒポクラテスの教えこそが人を診る原点である。
生物が自力で治る力、これを自然治癒と呼ぶ。機械と決定的に異なる点だ。自然治癒こそ〝生命のルール〟であり、下等から高等への進化の道程で、生物に刻印された遺伝情報である。ナイチンゲールも『看護覚え書』の序章で「病を癒やす力」の大切さを説き、看護もそれを拠所にすべきだと述べている。医学は自然治癒のアシスタントと言えそうだ。
医学の世界には「世の中に病気というものは存在しない。あるのは病気に罹った人だけである」との格言がある。勿論「病気でなく病人を診よ」のヒポクラテスの全人的医療が原典だ。
全人的医療とは、人を一心同体に診る。1つの病気を身体の全器官との関連に於いて診る。更には社会的にも診る。そして、究極的に人間全体を診ることなのであろう。しかし、極限まで細分化・専門化した現代医学を総合的・全人的に組立てるのは容易ではない。恐らく、右脳と左脳の絆が唯一の突破口だろう。
言語中枢の存否により、左脳を言語脳、右脳を非言語脳・音楽脳と呼ぶ。言うまでもなく、言語は人と人のコミュニケーションの要だ。
左脳は情報機械に向くデジタル型(計数型)であり、右脳は力学機械に向くアナログ型(類比型)である。左脳は特に計算に強く、右脳は幾何学や絵画などの空間的認知に優れている。
現代社会はデジタルの時代だ。地球上の至る所に情報網が張り巡らされている。AIを筆頭に、左脳万能時代の様相だ。分化の左脳と総合の右脳、部分の左脳と全体の右脳、科学の左脳と哲学の右脳…、右脳の復活を祈りたい。

医師に問い掛けたい「医療の本質」

「人を診る」ということ。単純・複雑、簡単・難解、平凡・非凡が交錯するテーマで、すべての医師に「医療の本質」を問い掛けている。〝医師と患者〟の信頼関係・対等意識・感謝の気持ちを先ず肝に銘じるべきだ。さすれば、一人ひとりの医師の日常診療の切磋琢磨の中で「人を診る」正体が浮かんでくるのではなかろうか。

ページ上部へ戻る