滋賀の日本酒をベースにした本格的なカクテルがあるとの噂を聞きつけ、訪ねたのは滋賀県彦根市。JR彦根駅から徒歩3分程、ホテルの一階にある「サロンバー・シスル」。
以前一度だけ、洋酒好きの友人と来たことがありました。葉巻を嗜めるシガーバーということもあって、優雅な時間が流れるシックな設えの店内。思わぬところに隠れ家を見つけたと喜んでいたものの、後日、酒業界の方々から度々お店の名前を耳にして、知る人ぞ知る有名なバーだとわかり、改めて行く機会をうかがっていました。
某日、開店時間もそこそこに、お店へと伺いました。ずらりと並んだボトルを前に、ほの暗い灯りに包まれたカウンターに通されると、さっそく〝例のカクテル〟を注文しました。
バーテンダーが幾つかの美しいボトルを取り出し、あざやかな手つきでシェイカーを振ります。所作に見とれているうちに、美しいカクテルが目の前に置かれました。
うっすらと乳白色にきらめく水面、その名も〝近江アフロディーテ 羽衣の舞〟というカクテル。キラキラとした輝きは「アフロディーテ(北岡本店)」というパールパウダーが入った珍しいリキュールによるもの。ブルーベリーリキュールやレモンの爽やかさに、滋賀酒のコクのある味わいをほのかに感じました。
このカクテルは、今秋開催の滋賀県酒造組合による「滋賀地酒10000人乾杯プロジェクト」の一環で、新たに「滋賀酒カクテルコンペティション」の第一回が行われ、たくさんの応募があった中から、最優秀賞に輝いたもの。入賞したカクテルのレシピはWEBにも公開されていて、このレシピに基づいて、店ではプロのバーテンダーにより提供されます。
そもそも、私がこのカクテルを知ったのは、滋賀のある蔵元さんから「コンペにはプロアマともに全国から応募があり、見た目や味わいで滋賀を美しく表現した作品ばかり、本格的なカクテルが出揃った」と、驚きを持って話されたことがきっかけでした。
その後、一次審査を通過した3名のファイナリストから、カクテルの完成度とSNSでのPR発信力も評価に加えて、グランプリが決定。この大会運営に、バー・シスルが事務局となられていたことから、店ではいち早くこのカクテルが提供されていました。
なかでも興味深いのは、コンペでベースに使われた日本酒は、滋賀県内33蔵をブレンドした特別コラボ酒であるということ。滋賀県酒造組合は全国でもいち早く、県内加盟の全蔵をブレンドしたコラボ酒を共同開発していて、すでに7年前から限定出荷されています。例年10月初旬に、滋賀地酒で一斉乾杯するイベント日に合わせて県内酒販店に出荷され、昨年からは地元のコンビニやスーパーにも流通の販路を広げています。
現在、バー・シスルでは、最優秀賞の作品カクテルに、長浜市の「七本鎗(冨田酒造)」純米酒をベースにして、来年の大会までこのメニューを提供されています。
滋賀県には、歴史ある老舗蔵や小さい造りをする小蔵元が多く、いざという時の蔵元同士の結束力も魅力の一つ。それぞれに個性豊かな味わいが揃うなか、毎年、コラボ酒には心地よい味わいのハーモニーが生まれています。着々と進化を続ける滋賀の地酒に、これからも目が離せません。