大阪府保険医協会は9月27日に開催した長期収載品の「選定療養化」緊急学習集会で下記の決議を採択しました。
選定療養「長期収載品の差額徴収」の廃止を求める決議
国は後発医薬品のある先発医薬品、いわゆる長期収載品について国が定める「医療的な理由」以外で処方がなされた場合に後発医薬品との差額の4分の1を患者から差額徴収することを決めた。厚労省は「選定療養」として導入するとしたが、すでに保険収載されている先発医薬品を対象としている点、申請方式ではなく全ての医療機関、調剤薬局を対象としている点、徴収する額が規定されている点など、これまでの選定療養とは異質のものとなっている。
9月5日に保険医協会が行った厚労省レクチャーでは担当者が「現在、先発医薬品を使用し安定している患者についても後発医薬品を一度は使用してもらう」主旨の発言をした。安定的に処方している薬剤を変更することはリスクが伴い、患者の命と健康を守るために第一線で診療に従事する医療者にとって到底受け入れられるものではない。参加した医師からは「後発医薬品でコントロール可能な患者についてはすでに後発医薬品を使用している」「この患者には副作用が出るかも知れない、と考えながら処方しろということか」など怒りの声が出された。医師の裁量権が保険診療においては「長期収載品ではなく後発医薬品を第一選択とする」ことで侵害されてしまっている。
また、担当者からは「この制度は医療保険制度を持続するために必要なもので理解して欲しい」との発言もあった。これは日本の医療制度は維持が精一杯で発展は望むべくもない、という趣旨なのか。国民皆保険制度は国民の生存権を保障するためのものであり、本来は財政状況により左右されるものではない。国民の生存権を保障し、国による社会保障の増進を義務付けている憲法25条に違反する態度である。
また、この制度に対する患者への説明を医療機関、調剤薬局に押し付けている点も看過することはできない。厚労省は3月に行った保団連との交渉の中で「半年かけて国民に丁寧に説明し理解を得る」とした。現状はどうか。制度が開始される10月から患者への説明に医療現場が混乱することは必至ではないか。マイナ保険証をめぐる混乱の二の舞となりかねない、今回の厚労省の対応に強く抗議する。
さらに先発医薬品に対する自己負担を上げることで、患者の意識を市販薬に向かわせ、保険収載品のスイッチOTC化による「薬の保険外し」を推進させる狙いがあることは明白である。
今回の「長期収載品と後発医薬品の差額徴収」を強制する選定療養費制度は、「安心・安全」の医療を国民すべてに保障した国民皆保険制度と相容れないものである。我々学習会参加者は以下の点を要求する。
一.選定療養「長期収載品と後発医薬品の差額徴収」は廃止すること
2024年9月27日 学習会 参加者一同