(政策調査部長談話)今回の診療報酬改定は医療の質を低下させる診療報酬の引き上げとともに患者負担の軽減実現を

2024年2月29日
大阪府保険医協会 政策調査部長 斉藤和則

診療報酬の改定内容について、2月14日に中医協で答申が発表されたことを受け、新聞各紙は初・再診料が引き上げられ医療従事者の賃上げの原資に充てられること、それにより患者窓口負担が増加することを大きく報道しています。しかし、今回の改定は総枠ではマイナス改定であり、多くの患者さんにおいて窓口負担の総額はむしろ減少する面もあります。

しかしながら、医療界の賃上げは他分野・産業の賃上げ水準に大きく遅れているため、人材流出などが起きており医療現場は深刻な人手不足の状況にあります。公的保険制度における収入がスタッフ賃金の原資となる医療機関とりわけ診療所にとって、初・再診料をはじめとする診療報酬の引き上げはスタッフ賃金の引き上げや人手不足解消のために必要不可欠ですが、「今回の診療報酬改定の内容ではとても足りない」というのが医療現場の実態です。

また今回の改定では、生活習慣病(糖尿病・高血圧・脂質異常症)の管理料の点数が大きく引き下げられることから、診療所を中心に経営の悪化を危惧する声が多くあがっています。実際、大阪府保険医協会が2月初旬に行った会員医療機関アンケートでも、「減収となり賃上げどころでなくなる」「診療所の経営を更に困難にする」「ダメージが大きすぎ廃院するところも出てくる」などの意見が多数寄せられました。診療所の経営悪化により閉院・廃業ともなれば、地域全体の医療の質の低下ひいては地域医療の崩壊にもつながってしまいます。

初・再診料の引き上げにより患者窓口負担が増加することに不安を感じる方も多くいらっしゃると思います。患者窓口負担が増加することは、経済的理由などによる受診抑制につながるなど医療から国民を遠ざける重大な問題であり、大阪府保険医協会も患者窓口負担の軽減を国に要請しています。
しかし、医療の質の確保や地域医療を守るためには診療報酬の引き上げは何としても必要であるというのも医療現場の実態です。診療報酬の引き上げにより患者負担が増加することを緩和するには、社会保障の予算を増やし患者の窓口負担割合を引き下げるしかありません。実際に、「窓口負担なし」(原則無料)を実現している欧州などの先進国は、突出して高い高齢化率である日本より医療費の対GDP比が高いことからも、いかに日本の医療現場が低い報酬で医療を提供しているかがわかります。
そもそも、日本も消費税が3%から5%に引き上げられる1997年まではサラリーマン本人や高齢者の窓口負担割合は1割であり、更に遡れば無料だった時代もあります。国には国民のいのち・健康を守る責務があります。国民生活が苦しくなり、国民負担率が5割を超えている今こそ、医療費窓口負担割合の引下げなどの施策が求められているのではないでしょうか。

大阪府保険医協会は、今後も国に対し国民医療の制度拡充や患者窓口負担の軽減を要求するとともに、大阪府や自治体に対して医療費助成制度の拡充などを求めてまいります。


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