【理事会声明】2025年大阪・関西万博は中止の決断を

報道関係各社御中
大阪府保険医協会は、大阪・関西万博に対し、下記の理事会声明を発表しました。

2025年大阪・関西万博は中止の決断を

関連事業費すでに1兆円超 大阪府民・国民負担は際限なく膨張の恐れ

2025年開催予定の大阪・関西万博の会場建設費について、2回目となる増額修正で最大2350億円へと当初計画(1250億円)の約1.9倍に膨らむことが正式に報告された。会場建設費は、国、大阪府・市、経済界で3分の1ずつの負担とされている。この間実施されたJNN(10/1)やNHK(10/11)の世論調査では、建設費の上振れに「納得できない」がそれぞれ64%、56%にのぼるなど、国民の負担が増大することに批判の声が上がっている。また、当初は主に入場料収入でまかなう予定だった警備費200億円も国費で負担する方針も出てきている。

万博・カジノ、夢洲開発では、判明しているだけでも関連事業費が1兆円超に膨らんでいる。物価高騰の行方が見通せないなか、大阪府・市の財政負担、府民・国民の負担は際限なく膨れ上がる危険性が高い。

安全性度外視の推進本部 来場者・働く人々のいのちを軽視

もう一つの大きな問題が、会場の安全性だ。大阪府・市でつくる大阪・関西万博推進本部は9月27日の会合で、万博開催に間に合わせるために会場やパビリオンなどに対する建築確認の大幅な規制緩和などを盛り込んだ対策を決定した。通常の審査を省略・簡略化するもので、多くの来場者を見込む中で慎重な審査が求められる建築物の安全確保に逆行する対応と言わざるを得ない。また、取りざたされていた建設労働者に対する時間規制の緩和などは盛り込まれなかったが、規制の対象外となる請負業者で対応する可能性も出てきている。

そもそも、万博予定地の浚渫土砂には、発がん性のあるポリ塩化ビフェニル(PCB)が環境基準の28倍、総水銀が24倍、フッ化物が下限値基準の8倍含まれており、粉塵が舞い上がった場合の人体への影響が心配されているほか、災害発生時に夢洲の外への避難ルートである夢舞大橋と夢咲トンネルがどちらも使用できなくなる想定がなされていないなど、夢洲が会場であるが故の課題も何ら解決の道筋が示されていない。このまま万博開催に向かうのであれば、来場者・働く人々のいのちを軽視していると指摘せざるを得ない。

更に、万博工事の遅れを受けて、大阪府と大阪市は他の公共工事を後回しにする「万博優先策」を発表し、住民が開設を待ち望んでいる旧住吉市民病院跡地での新病院建設工事の工程も見直すとした。完了時期は変わらないと説明しているが、住民のための病院建設を後回しにして何が「いのち輝く」なのだろうか。

万博は中止し、国民生活を支える施策にこそ財政振り向けるべき

来年4月までに中止すれば、参加国や国際万博協会への補償額は約325億円で済むとされている。国や自治体は、物価高騰にあえぐ国民生活を支える施策にこそ財政を振り向けるべきであり、国民が納得してない万博関連事業費に莫大な税金を注ぎ込むべきではない。

私たち大阪府保険医協会は、政府、大阪府・市、万博協会に対し、2025年大阪・関西万博の開催について中止を決断し、現時点で公が果たすべき役割に心血を注ぐことを強く求める。

2023年10月26日
大阪府保険医協会 第2回理事会


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