大阪府保険医協会産婦人科部会が下記の声明を発表しました。
報道関係各社御中
国が2026年に正常分娩の保険適用を進める方向性を明らかにするなか、分娩医療機関よりこの動きを不安視する声が寄せられた。これを受けて大府保険医協会産婦人科部会は「正常分娩の保険適用に関するアンケート」に取り組み、8月に大阪府下125分娩医療機関にアンケートを送付。6割を超える79件の回答を得た。
ここで示された意見のうち、重要と思われる点を上げて正常分娩の保険適用に対して慎重な議論を求める部会声明とする。
「正常分娩の保険適用」の是非について「反対」が58%、「どちらともいえない」が31%となった。ほぼ分娩のみを対象とする有床診療所と産科病院を抽出すると、76%が「反対」となっている。
総合病院においては、「反対」が40%、「どちらともいえない」が43%となっている。
それぞれの個別意見を見ると問題意識は共通しており「分娩の対価」が保障されるか、現在の提供体制が維持できるのかを懸念する声が多数となっている。
制度設計が明らかでない現状では、リスクのある制度変更への危機感が有床診療所・産科病院で特に強く表れたと考えられる。
現在の出産育児一時金相当(50万円)で保険適用された場合の分娩の継続について尋ねた設問では、「継続できる」が44%、「継続できない」が51%となった。有床診療所と産科病院では69%が「継続できない」、総合病院では「継続できる」が60%、「継続できない」が35%となった。ここでも、有床診療所・産科病院において強い危機感が示された。
協会産婦人科部会として、分娩医療機関のこのような意見があるなかで、先般の「不妊治療の保険適用」の事例を顧みるに、重大な懸念を表明せざるを得ない。
正常分娩の保険適用について慎重な議論を求めるとともに、議論の期限を定めることに反対する。
議論にあたり、いくつかの前提を確認しておきたい。
妊婦の最大の要求は、分娩施設へのアクセスが容易であり、選択できる自由度があるということ、そのため、地域に広く分娩施設が存在する状態が望ましいこと、分娩医療機関は相応のコストがかかる一方で入院対象は分娩に限定されること、分娩総数は社会状況により決まり、一医療機関の経営努力に限界があること、そのなかで単価が固定される「正常分娩の保険適用」は、分娩医療機関を経営危機に追いやる可能性があること、これらを踏まえた慎重な議論を重ねて要望して声明とする。
2023年10月6日
大阪府保険医協会 産婦人科部会
お問合わせ/大阪府保険医協会 電話06-6568-7721(担当 大谷・織原)