多くの無保険者をうむ健康保険証とマイナンバーカードの一本化は撤回を

国民皆保険の基盤である保険証は存続しかない

「保険証廃止なんてあり得ない!マイナンバー法等改正案は撤回を!
医療・介護・福祉 怒りのアピール行動」
2023年5月13日 大阪府保険医協会

健康保険証を廃止しマイナンバーカードと一本化することを含んだ「マイナンバー法等一部改正法案」が、4月27日に衆議院本会議で可決され、28日から参議院での審議が始まった。政府は5月19日の採決・成立を目指しているが、国民皆保険の基盤を揺るがし、国民のいのちや健康にかかわる重要法案を僅かな審議時間で早々に採決することは決して許されない。我々は、徹底審議を行い、廃案にすることを強く求める。

保険者には全ての被保険者に被保険者証(健康保険証)を発行・交付する「義務」があり、現在は有効期限が切れる前に新しい保険証が被保険者に届けられている。しかし、同法案はこの「発行・交付義務」を被保険者による「申請主義」に転換するものであり、更新手続きが新たに被保険者に求められることとなる。しかも、「マイナ保険証」の場合は5年毎に自治体窓口での更新手続きが必要であり、その際には暗証番号が6~16桁の「署名用電子証明書」と、同じく4桁の「利用者証明用電子証明書」、さらに4桁の「住民基本台帳用」のパスワードが必要になる。これだけの手続きを赤ちゃんからお年寄りまで全ての国民が遅滞なく行うことは不可能であり、更新・申請の遅れ等でいざ医療が必要となった際に「無保険状態」となる国民が多く発生する危険性が強く危惧される。

医療現場では、今年4月からマイナンバーカードを用いた保険資格確認(オンライン資格確認)が一方的に導入されつつあるが、当会が5月2日に実施した会員アンケートでは、正確な資格情報がシステムに反映されておらず、資格が確認できない等のトラブルを経験した医療機関は半数以上に達した。機器の不具合等も報告されており、円滑な診療のために保険証の持参を呼びかけている医療機関も少なくない。現時点では、保険証廃止の大前提となるオンライン資格確認システムは安定的に運用できる代物ではないのが実態である。

また、全国保険医団体連合会が行った高齢者施設への影響調査では、特養など高齢者施設の94%が「利用者・入所者のマイナンバーカードを管理できない」と回答しており、このまま健康保険証の廃止が強行されれば、利用者・入所者は医療へのアクセスに困難を抱えることになる。

衆議院では、「個人情報の漏えい(中略)に万全を期すこと」「全ての被保険者が確実に保険診療を受けることができるための措置を講ずること」など12本の附帯決議が採決された。これは現時点での改正内容では国民の権利が大きく侵害されることの証左である。

政府は保険証廃止方針を示して以降、様々な“改善策”を打ち出しているが、どれも根本的な解決策にはなっておらず、国民皆保険制度が確立されて60年、大きな問題もなく運用されてきた保険証をなぜ廃止せねばならないかの理論的説明もできていない。

国民皆保険制度を守るためには、現行の健康保険証を存続させるしか道はない。国民のいのちと健康を守る立場から、我々は、現行の健康保険証の存続を強く求める。


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