2022年度診療報酬改定答申に対する副理事長談話

2022年2月14日
大阪府保険医協会
副理事長 井上美佐

中医協は2月9日総会を開催し、「令和4年度(2022年度)診療報酬改定」に係る答申を行ったが、その内容は、国民のための医療充実とは程遠く、命と健康を預かる医師として納得いくものではない。

今回、オンライン初診が解禁された。2020年4月に規制改革推進会議による解禁のもとめに応じて、「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」の閣議において、新型コロナウイルスの院内感染防止等を理由にオンライン・電話診療の制度見直しを決定し、臨時的に解禁された。われわれはこの扱いは臨時的であってなし崩し的拡大に利用することは許されないと一貫した立場で臨んできた。オンライン初診は対面による初診と同水準の質を確保できるのか大いに疑問であり、リスクが大きい。また急変時には原則自院で対面診療することとされたが、やむを得ない場合は他の医療機関にゆだねることが出来るとしている。このようになれば地域を超えて診療が可能となり、地域医療の崩壊が起こることも憂慮する。

紹介状なしで大病院に受診する場合等の定額負担、いわゆる「受診時定額負担」について一部を保険給付から外して患者負担させる方式を取り入れたことはフリーアクセス権の更なる侵害となる重大な制度変更である。また過去に「外来受診時定額負担」の導入が検討されていたことから、診療所等さらなる対象医療機関の拡大を懸念する。

外来感染対策向上加算は、新型コロナウイルス感染症のみならず、新興感染症も視野に入れた感染防止対策は必要であるが、月1回6点とはあまりにも低すぎる。感染対策のコストと外来医療機関の医療従事者の努力に見合った形で評価されたとは言い難い。国は感染対策を本気でするつもりはあるのか。診察料を大幅に引き上げて医療機関が安心して恒常的な対策がとれるようにすべきである。

リフィル処方箋の導入は、患者の健康確保上から極めて問題が多い。利便性を第一に考えられたものであり、実態は無診投薬に等しく、患者の疾患管理が不十分になる恐れがある。また外来受診抑制目的が見え隠れする点からも導入に対して反対である。

湿布の処方制限について、支払側が主張していた「1処方につき35枚」の制限を63枚に押しとどめた。これは弊会外科整形外科部会を中心に取り組んできた院長・患者の署名運動により医療界での世論を喚起し、中医協委員への働きかけてきた成果である。今回、湿布がターゲットにされたが、財務省の資料では「診療は保険、薬局で買える薬は自身で購入」と言いスイッチOTC薬の保険外しを狙っている。引き続き阻止する運動が求められる。

 入院分野においては、重症度、医療・看護必要度の厳格化の影響が懸念される。多くの内科系の中小規模病院が、急性期一般病棟入院料1(7対1看護配置)を取り下げることにより、どれだけ地域の入院医療が弱体化するのか、コロナ禍のなかで、奮闘している病院に対してマイナスのメッセージとなる。新興感染症対策を柱に謳った今次改定の趣旨にも反する。

新興感染症対策の柱として感染防止対策加算が感染対策向上加算に再編されたことも問題である。従来の院内感染防止の評価から、感染拡大時に受け入れ病院となることを前提とした評価に位置づけが変更されており、感染症患者の受入を想定していない専門病院などが院内感染対策に取組んでいても、要件を満たすのが困難となった。

前述の重症度、医療・看護必要度の厳格化で病棟のマンパワーを削減する方向を示しつつ、この加算で受入病院であることを強いるという矛盾をどう説明するのか。

国は感染症病床や保健所の増設による対策を放棄し、一般病院の対応能力を引き上げることを新興感染症対策の方針としているが、その矛盾が現れた改定であると断じざるを得ない。

そのほかにも、①マイナンバーカードによるオンライン資格確認の誘導点数である「電子的保健医療情報活用加算」の新設、②「適切な評価の推進」の名のもとに生活習慣病管理料、在医総管・施設総管、疾患別リハに外来データ提出加算を新設などと今回の改定ではコロナ禍に乗じて、経済界や支払側の要求によるものも目立った。

われわれは医療費抑制政策を終わりにし、患者・国民の命と健康を守る診療報酬の大幅引き上げを求めるために、患者・国民と会員の先生方とともに引き続き運動をすすめていくものである。


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