2018年3月末で廃止された大阪府の「老人医療費助成制度」は2021年3月末で経過措置が終了します。これまで老人医療費助成制度の対象だった方の一部は「重度障がい者医療費助成制度」等に整理・統合されました。難病患者においては、全年齢で指定難病対象を333疾患に拡充したとされましたが、助成を受ける条件として「障がい年金1級等を所持している者」に限られており、多くの難病患者が助成制度の対象から外れています。改めて老人医療費助成制度が廃止されることによる難病患者への影響にスポットをあて問題点を整理したいと思います。

まず、難病患者が受けられる医療の助成として、国の指定難病制度があります。指定難病受給者証を持つ患者は、その難病に関係する医療費のみが助成対象となります。一方、大阪府の老人医療費助成制度は65歳以上の特定の難病患者が対象となり、難病に関係する医療に限定されず一律に助成されます。

療養期間が長期になるにつれて、治療内容が難病に関係するかどうかが不明確になり、助成対象外の医療が増えていくという「指定難病」の欠点を補完する制度が、府の医療費助成制度であり、患者の自己負担軽減に繋がっています。

老人医療費助成制度が廃止され、重度障がい者医療費助成制度に整理・統合されましたが、難病患者の受給条件として、指定難病受給者証または特定疾患医療受給者証を持っていて、なおかつ「障がい年金1級または特別児童扶養手当1級に該当する方」に限定されています(図1)。

(図1)指定難病患者の老人医療対象者(大阪難病連作成)
2018年3月末で廃止された老人医療費助成制度に重度の難病患者が対象拡大されたが、条件として障がい年金1級等の受給者であることが定められている

助成制度統合・整理後の難病患者対象者は、初年度の事業規模において約900人になると推計され、これは老人医療費助成の経過措置対象者の5.1%に過ぎません。さらに今年3月の実績としては35人と0.2%の補足率であり、まさに難病患者にとって整理・統合により制度が崩壊したと言えます(図2)。

(図2)難病患者の助成受給実績(大阪難病連作成)

そもそも、障がい年金をもらわないと助成されない制度自体に疑問を抱かざるを得ません。これは、難病患者に適用できるかの妥当性を検証もせず、既存の障がい者の制度に「難病患者」を当てはめただけで、具体性や根拠がない制度となっており、利用者や市民の目線が全く欠けているように感じます。

大阪府保険医協会はこうした問題点を挙げ、大阪府に対し、11月30日に老人医療費助成制度の復活とその他の医療費助成制度の拡充を要望しています。

負担増に不安抱える声あがる
難病連が老人医療の実態を調査

NPO大阪難病連が会員向けに「難病患者の老人医療費助成制度(経過措置)対象者の医療費調査」を11月に実施。発送総数66件中37件の回答の集計を発表していますので、紹介します。

回答者の主たる病名として、全身性エリテマトーデス(SLE)が12人、全身性強皮症が10人、多発性筋炎/皮膚筋炎が3人などでした。回答者のうち、老人医療費助成制度の対象疾患ではない方が5人で関節リウマチ、巨細胞性動脈炎、、成人スチル病などの疾患の方でした。

老人医療費助成制度の経過措置中の方が19人で、このうち経過措置終了後にどうなるのか、よくわからないと答えたのは11人、重度障がい者医療費助成制度の要件を満たさないので移行できないと答えたのは6人でした。回答者の約9割の方が経過措置終了後、助成がなくなるもしくは、なくなる可能性が高いことが明らかになりました。

当事者からは「一生病院とお付き合いをしないといけないので、年とともに生活が苦しくなるか不安です」「全身性疾患のため、内科含め5科を受診している。この制度が終われば、医療費が膨大となる。是非とも継続してほしい」などの声が寄せられています。

制度から外れる人の受け皿をどうするか大阪府は責任を持って対応すべきであります。


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