報道関係各社 御中
次年度診療報酬の改定率と「全世代型社会保障検討会議」中間報告をうけて高本理事長が談話を発表
4期連続の診療報酬の引き下げに強く抗議する
2020年度の診療報酬改定について、政府は17日の予算大臣折衝で、本体部分を0.47%引き上げることに加えて救急病院の勤務医の働き方改革への対応分として0.08%上積みし、0.55%増やすことを決定しました。
しかし、同時に薬価等は1.01%引下げ、薬価の引き下げ分は今回も本体部分には回りませんでした。私たちは高薬価等を是正し技術料の引き上げを強く求めてきましたが、マイナス改定の方向は変わりませんでした。全体としては2014年から4回連続のマイナス改定となり、国民の命と健康を預かる医師として強く抗議します。
全国の院長署名が“大幅マイナス改定ありき”の流れを変える
今回の改定では、「骨太の方針2015」以降の“社会保障費の自然増を抑制する”方針の下、財務省が11月1日、財政制度等審議会で次期診療報酬改定は、ネットで2%以上のマイナス改定を提言していました。
こうした中で、本体部分の微増は、「大幅マイナス改定ありき」の政府の姿勢に対して「診療報酬の引き上げ」を強く要求した全国の保険医の1万1千人の会員署名をもって、厚労省など関係各省に対して強く要望したことが反映したと確信するとともに、大阪では1200人の会員の先生方がこの署名に協力いただいたことにお礼申し上げます。
医師の技術料を正当に評価することを強く望む
診療報酬改定の具体的な内容はこれから示されますが、11月11日の社会保障審議会医療保険部会に出された「基本方針」には「効率化・適正化」を進め「経済・財政との調和を図る観点」が重要としており、私たちが希望する基本診療料の引き上げより、アウトカム評価の推進、医療機能分化の強化などに重点を置いた点数設定になることを危惧します。
診療報酬点数は、そもそも私たち医師と医療従事者の技術料に対する評価が基本です。しかし、現在の政府の診療報酬改定への姿勢は、医療費の抑制と公的保険を経済成長産業の梃子として政策的誘導策のツールに変質させており、強い憤りを感じます。
私たちは、あらためて安心・安全の医療を提供するためにも診療報酬の10%以上の引き上げは必要と強く訴えます。
国民に新たな負担を押し付ける「全世代型社会保障検討会議」の中間まとめ
最後に「全世代型社会保障制度検討会議」が19日、中間報告をまとめました。
私たちは、診療報酬引上げの運動とともに、患者負担の軽減を求める運動を進めてきました。こうした運動の広がりは、世論にも影響し、今回の中間報告も政府が何度も何度も目論む「受診時定額負担」は見送りになりました。
しかし一定所得のある75歳以上の医療費窓口負担については、2022年までに2割負担の実施を目指すとしています。大病院の外来受診時の紹介状なし負担も「200床以上」の一般病床に拡大するとしています。
この他、70歳まで働き続ける雇用形態など、低年金暮らしの収入のない高齢者に負担を求め“死ぬまで働け”と言わんばかりの中間報告を、国民の命と健康を守る医師として、到底認めることはできません。
真の「応能負担」を求める 患者負担増を許さない闘いが重要
政府は「能力に応じた負担」を強調します。お金をかけない政策を進める一方で、わざわざお金のない人からお金をとり、暮らしも窮する国民をどんどん増やす。しかし、生活保護は締め付けていく。政府の言う“応能負担”を強いる政策を進めると、憲法が保障する基本的人権さえ危うくなる状態が広がるのではと危惧します。
高齢者をターゲットにして国民の中に世代間対立を煽るのでなく、能力に応じた「応能負担」を言うのであれば、史上空前の内部留保を抱える大企業に雇用を増やし、社会保障への負担を求めるべきです。
私たちは引き続き、医療機関が安心・安全な医療提供体制を担保するために、日常診療が必要とする診療報酬の改善を求めるとともに、患者にこれ以上の負担をさせない運動を進めていく決意です。何卒、ご協力よろしくお願い致します。