報道関係各社御中
大阪府保険医協会は下記の声明を発表しまた。 お問合せ/06-6568-7721(田川・上原)
健保連提言「抗ヒスタミン剤保険外し」等に反対する理事会声明
健康保険組合連合会(以下、健保連という)は、8月23日、「次期診療報酬改定に向けた政策提言(政策立案に資するレセプト分析に関する調査研究結果IV)」を公表した。その一つに花粉症のOTC類似薬の保険適用除外・自己負担率の引き上げがある。
花粉症治療薬については、花粉症を主病にする患者に対し、1処方につきOTC類似薬を1分類のみ投薬する場合は保険適用から除外すべきとし、スイッチOTC医薬品を使用して自ら治療する患者との整合性を図ることを提言した。「花粉症治療の診療ガイドラインでは、初期療法や軽症の場合、第2世代抗ヒスタミン薬など通常1分類の薬剤で治療を始める」と指摘。レセプト分析では花粉症治療薬の薬剤費のうち、OTC類似薬のみの処方の薬剤費は約1割で、このうち1分類のみの処方は約9割とし、OTC類似薬の保険適用範囲見直しで最大600億円の医療費削減効果が見込まれるとの推計も示した。
健保連は行動指針の「2」で「我々は『患者中心の医療』の実現に向けて積極的に行動します。」と謳っていながら、今回の提言は「患者中心の医療」とは到底言えない。
そもそも健保連が想定する初期、軽度の花粉症と診断するのは誰になるのか。刻一刻変化する病状に適切な治療をするのが重症化を防ぐことに繋がるが、医師の管理を離れて安易にスイッチOTC医薬品を薬局やドラッグストアで購入し続けるなら、軽症、中等症、重症と病状の重症度に応じた適切な治療のタイミングを失うことになり、病状の悪化と重症化はかえって医療費の上昇を招くことになる。なにより患者に不利益をもたらすことになる。
保険適用から外せば、医療機関にかからず患者の「自己診断」に頼ることになる。セルフメディケーションと言えば聞こえが良いかもしれないが、保険診療が成熟した日本で、なぜ医師の診断を受けずに、「自己診断」を強いられなければならないのか。レセプトにあらわれる疾患名は当然ながら医師の診断結果であり、病気の一局面を示すレセプトの診断名だけで、軽度の疾病を保険適用から外すというロジックは完全に破綻している。受診の結果、“軽度の花粉症なので帰りに薬局でスイッチOTC医薬品を買ってくださいね”は、信頼関係をもとに成り立つ医療を崩壊させるものであり、医師への不信感と離反を増幅するものである。
日本耳鼻科学会、日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会による「鼻アレルギー診療ガイドライン(2016年度改定版)」によれば、第2世代抗ヒスタミン剤は、優先的に使用するべき主薬として推奨度が高い薬剤に位置づけされている。その医薬品を保険適用から外すことはもってのほかであり、患者である被保険者は保険料を納めており、花粉症になればその治療のため薬剤を含め保険給付されるのが当然である。
現時点で国・厚生労働省は検討を行っていないというが、2018年12月30日に閣議決定された「新経済・財政再生計画 改革工程表2018」で「薬剤自己負担の引上げについて、諸外国の薬剤自己負担の仕組みも参考としつつ、市販品と医療用医薬品との間の価格のバランス等の観点から、引き続き関係審議会において検討し、その結果に基づき必要な措置を講ずる」とされており、今後検討されることは必至である。国民の命と健康維持を担う使命を持つ厚生労働省は、今一度再考すべきではないか。
国の責任放棄となる「抗ヒスタミン剤の保険外し」の検討は許されない。またこの間の「うがい薬」「湿布薬」「ヘパリン類似物質」の保険外しの動きから明らかなように、単なる保険外しの道具となっている医薬品の安易なスイッチOTC医薬品への動き自体に厳重に抗議する。
2019年9月18日 大阪府保険医協会