大阪府保険医協会は、「組織犯罪処罰法改正案」(共謀罪)について、医療機関においても監視の対象となる可能性が大きいとして、以下の理事会声明を発表しました。
現代版“治安維持法” 「共謀罪」法案に断固反対
4度目の廃案に追い込もう
政府は3月21日、犯罪の計画段階で処罰する「テロ等準備罪」を新設する法案(組織犯罪処罰法改正案)を閣議決定し、この4月中にも今国会で成立させることを狙っている。しかし、この事実上の「共謀罪」は過去3回の国会で廃案になっており、今回は名称を「テロ等準備罪」に変えただけのものである。
当初は「国連における国際組織犯罪防止条約(TOC条約)批准のため」とされ、今回は2020年の東京五輪・パラリンピックに向けた「テロ等の組織犯罪への対策強化」と強調している。しかし、その原案の内容が明らかになるにつれ、国民の思想・内心・対話などを処罰の対象にする極めて危険な法律であることが浮き彫りとなった。
この「共謀罪」は、犯罪行為を処罰する大原則(既遂)を覆して「合意」や「準備行為」という計画の段階で処罰するものであり、憲法第19条で保障された思想・良心の自由を著しく侵害するものである。
そして、犯罪対象を当初の676から277まで絞り込んだとしているが、テロや重大犯罪に限らない公職選挙法や道路交通法まで幅広く市民生活に係わる犯罪も対象となっている。すなわち、取り締まり対象がTOC条約の想定するマフィアなど組織犯罪集団ではなく、一般市民に向いているのである。このままでは、国民の日常的な会話や通信を監視するための盗聴・盗撮・内偵など人権侵害性の高い捜査が横行し、逮捕・拘留等の警察権が格段に強化されることになる。我々のような医療改善を求める団体や個人も監視の対象となる可能性が大である。
さらに、「共謀罪」の対象となる法律には向精神薬取締法や医薬品医療機器等法などが含まれており、医療機関と患者や業者とのやりとりが犯罪の「合意」や「準備行為」とされかねない恐れもある。
この間の国会審議において、政府は「一般団体・個人は対象ではない」などと強弁してきたが、TOC条約の起草過程で日本政府自身がテロを対象とすべきでないと主張してきたことが判明し、“国民監視”という批判を避けるために「テロリズム集団」という文言を付け加えたに過ぎないことが明らかとなった。
「共謀罪」の本質は現代版「治安維持法」であり、特定秘密保護法や安保法制とあわせて「戦争する国」として市民を抑圧し、監視を強化する以外の何ものでもない。我々は国民の命と健康を守る医師の団体として「共謀罪」法案に断固反対する。この法案の危険性を広く知らせ、過去3回廃案にさせた世論の力を総結集して4度目の廃案に追い込もう。
2017年4月13日
大阪府保険医協会
第13回理事会