在宅医療アンケート結果(2016.3実施)


大阪府保険医協会は、3月に在宅医療の現状に関する事例を募ったところ、150件の医療機関から意見が寄せられました。その概要と主な意見を4月17日に発表しました。

在宅医療アンケートに寄せられた意見

これでは責任を持って在宅はできない

 政府は「病院完結型」から「地域完結型」を掲げ、この間の点数改定では入院基本料の算定要件の強化と在宅医療を重点にした改定を進めています。大阪の地域医療構想(案)では2025年には約16万人/日の在宅医療患者が出ると推計しています。

 大阪府保険医協会では、3月に在宅医療の現状に関する事例を募ったところ、150件の医療機関から意見が寄せられました。

 「気管切開」「人工呼吸器の方」「ICUから直接自宅へ」という患者さんが増えた…。

 今回の調査では、“重症”の患者が在宅に戻され、開業医の苦悩する実態をうかがわせる事例が少なくありません(表1)。急性増悪時の受入れ先病院が見つからない例も多数寄せられています(表2)。また今回は「在宅をしていない」「やめた」医療機関からの意見も多数あり(表3)、「在宅」をしている医療機関の“苦悩”と同時に「在宅医療に踏み切れない」事情も浮き彫りになりました。

「重症の循環器患者を在宅で診られるのか」

在宅医療の担い手である医療機関は、24時間対応やスタッフの雇用とその人件費等の問題に加えて、緊急時の受入れ先(病院)が見つけられない問題があります。

在宅医療だけでなく、患者さんの急変で家族から電話がかかり、対応に苦慮する経験はどこの医療機関も経験しています。患者さんの容態急変は時間との勝負ですが、救急対応の病院でも専門医が少なく、こうしたいざというときに患者を送れる病院が非常に少ないとの声に加えて「病床削減は困難な実態にある在宅医療の現場を更に疲弊させる」として国の医療政策を糾す意見も寄せられています。

在宅を担う医師は「このままでは自分自身がもたない」と、今の患者さんを最後に、在宅を止めるという意見もあり、「地域の開業医に丸投げ状態の今の在宅医療の実態を伝えて欲しい」という声は少なくありません。

「心不全の一番重い重症度4の患者を病院に送ったら、なぜか短期しか入院できず、そのまま重症度4のまま退院してきた」。事例を寄せた循環器を専門とする医師からは「心臓発作、増悪など心臓のアクシデントは夜間、早朝に多いとの統計学的にも論文で立証されている。今のような状況で重症の循環器患者を在宅で診られるのか」との疑問を投げかけています。政府の強引な診療報酬をテコにした病床削減政策は地域医療を担う開業医にも大きな影響を与えています。

“高齢者置き去り”の医療政策の見直し必要

 大阪府保険医協会は、今回寄せられた意見を関係各機関や地元国会議員、そして報道関係各社にも発信し、「病院完結型」から「地域完結型」を口実にした“医療費抑制優先”のための病床削減と在宅医療推進に警鐘をならし、高齢者を置き去りにした今の医療政策の見直しを迫る活動を進めていきます。なお、今回の診療報酬改定では更に在宅医療の現場を混乱させる点数になり、「ますます意欲がそがれる…」との意見があり、改定後の在宅医療の実態調査も5月に予定しています。

 

表1 病院から紹介された症状が重い在宅患者の主な事例患

  • 心不全の重症度4の患者を病院に送ったら、そのまま重症度4のまま退院してきた。
  • 末期がん、胃ろう、中心静脈栄養など処置の必要な症例が増えた。
  • 肺炎が十分治癒しないまま退院され再発熱ですぐに再入院になりました。
  • 末期癌のフォローが超短期。そこまで急いで退院させる必要があるのか?
  • 癌末期、気管切開、中心静脈栄養、胃ろう患者など。
  • 気管切開、人工呼吸器の方、ICUから直接自宅へという患者さんが増えた。
  • 経口摂取がほとんどできない状態。

 

表2 急性増悪事に入院先が見つからない主な事例

  • 病・診連携していても、満床で断られ途方にくれたことは何度もあります。
  • 認知症があるとベッド探しに苦労する。
  • 夜間、休日の時間帯に受け入れ困難なこと多い。
  • 精神の障害ある人は入院先がみつけにくいようです。
  • 超高年齢(90歳以上)の時、認知症がある時、障害者の時など。
  • ノロや認知症と思われるケースは入院に困る。
  • 幻覚・興奮等急変時に速やかに対応してくれる病院が見つからないときがある。

 

表3 在宅をしない主な理由

  • スタッフも足りないし、現診療と業務以外に時間的余裕も無い。(53歳)
  • 往診にて対応のみ。ハードル(算定要件)が高い。(43歳)
  • 制度が複雑過ぎる。(59歳)
  • 保険点数や制度が難しい。また理解できない上によく変わる。(53歳)
  • 体力が必要。保険請求が複雑過ぎる。(59歳)
  • 休日の確保が難しい。その際の診療報酬制度ができていない。(46歳)
  • マンパワー不足。また診療所の経営を圧迫するだけ。(46歳)

 

表4 「在宅は止めた」医療機関の主な意見

  • 開業当初は在宅医療にも力を入れ、24時間電話を受け付けていましたが、在宅をするための要件がいろいろ増え、在宅に対する意欲がなくなった。
  • ターミナル期になるといつ電話がかかってくるかと思い、いつも電話を握りしめていたので気が気じゃなかった。

※この件についてのお問合せ、意見一覧表のご希望などは下記までご連絡下さい。

大阪府保険医協会 電話06-6568-7721(担当・田川/坂元)

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