「令和2年度診療報酬改定に係るこれまでの議論の整理」に対する大阪府保険医協会の意見(外来・在宅)

令和2年度診療報酬改定に係るこれまでの議論の整理」に対するパブリックコメント(パブコメ)を厚労省に提出しました(1月22日)。

以下、提出意見…(PDF版はこちら

Ⅰ医療従事者の負担軽減、医師等の働き方改革の推進

Ⅰ-4業務の効率化に資するICTの利活用の推進

(1)医療機関における業務の効率化・合理化の観点から、診療報酬の算定に当たり求めている会議及び記載事項について、要件を見直す。

上記項目に対する意見
診療報酬の算定に当たり求めている記載事項について、医療機関における業務の効率化・合理化の観点から行うことについて賛成です。医療現場ではレセプトの記載からカルテの記載まで詳細に求められることが多いため、困っている現状があります。さらなる簡素化を求めます。

Ⅱ 患者・国民にとって身近であって、安心・安全で質の高い医療の実現

Ⅱ-1 かかりつけ機能の評価

(3) 外来における継続的かつ全人的な医療の実施を推進する観点から、地域包括診療加算について要件を見直す。

上記項目に対する意見
日本の国民皆保険制度の誇れる点として、国民誰もが保険証1枚でどの医療機関にもかかれるフリーアクセス権の制限に繋がりかねない地域包括診療料、地域包括診療加算、認知症地域包括診療料、認知症地域包括診療加算(以下「地域包括診療料等」という)は廃止し、初・再診料の引き上げを行って下さい。

そもそも主治医とは各地域において患者・家族が主体的に選択するものであり、診療報酬において規定されるべきものではありません。しかし、地域包括診療料等は「主治医機能」の強化を目的に導入され、事実上、1患者につき1保険医療機関が算定する設定となっています。さらに今回、「かかりつけ医機能」の強化を加えることでフリーアクセスの制限が強化される方向に進むものと考えます。

そして「かかりつけ医」以外に受診したときに患者への受診時定額負担の導入にもつながりかねないため、要件緩和して広げることに反対です。

(1) 複数の医療機関を受診する患者の重複投薬の解消を推進する観点から、医師が自ら重複投薬の有無等を把握し、他の医療機関間の連絡・調整を行う取組や、薬局による重複投薬の有無等の確認の結果を活用して、かかりつけ医が重複投薬に関する他の医療機関との連絡・調整等を行う取組について新たな評価を行う。

上記項目に対する意見
ポリファーマシーに基づく、上記のような対応に関する考え方には賛成ですが、医師が自ら重複投薬の確認するのは、患者さんの診察に要する時間から見て負担が大きいため、医師の管理のもと医療機関で確認することで要件を満たすようにお願いしたい。
Ⅱ-2 患者にとって必要な情報提供や相談支援の推進

(1) かかりつけ医機能の普及を図る観点から、地域においてかかりつけ医機能を担う医療機関において、当該機能の更なる周知等の在り方について 、機能強化加算の掲示等の情報提供に係る要件を見直す。

上記項目に対する意見
初・再診料は、医師が患者を診療した際の最も基本的な技術評価であり、医療機関経営を安定させる十分な原資となるだけの点数設定が必要です。

診療報酬で特別に評価されなくても各地域でかかりつけ医としての役割を自覚して診療を行っている保険医を適正に評価する観点からも、現行の初・再診料の引き上げこそが必要です。

患者のフリーアクセスや出来高払い制の否定に繋がる機能強化加算は廃止するべきです。

(2)かかりつけ医機能及び医療機関間の連携を推進する観点から、紹介先の他の医療機関から紹介元のかかりつけ医機能を有する医療機関へ情報提供を行った場合について新たな評価を行う。

上記項目に対する意見
紹介先の他の医療機関から紹介元のかかりつけ医機能を有する医療機関への情報提供は、紹介元医療機関がかかりつけ医機能を有しない(機能強化加算の施設基準を届けていない)医療機関の場合でも評価するべきです。
Ⅱ-7-3 地域移行・地域生活支援の充実を含む質の高い精神医療の評価

(3)精神医療における在宅医療を適切に推進する観点から、精神科在宅患者支援管理料について、その本来の趣旨等を踏まえ要件を見直す。

上記項目に対する意見
同管理料1の「ハ」(重症患者等以外)に関しては、算定回数が重症患者に対する「イ」、「ロ」と比べて、算定回数が極端に多く、全体として重症患者の受け入れがなされていない傾向にある点が指摘されていることから、同管理料1の「ハ」の施設基準厳格化をするというのは、意味があるのでしょうか。全体として重症患者の受け入れがなされていない傾向にあるのは、同管理料1の「ハ」以外の施設基準が厳しいから対応できない医療機関が多いためではないでしょうか。偏りの是正に関係のない、同管理料1の「ハ」の施設基準厳格化は行わないでください。

(12) ギャンブル依存症に対して有効な治療の提供を推進する観点から、ギャンブル依存症の集団治療プログラムについて新たな評価を行う。

上記項目に対する意見
日本にはギャンブル依存症に苦しむ人が320万人いると厚労省は推計しており、有効な治療の提供を推進する観点において、保険適用することに反対するものではありません。ただ“ギャンブル依存症に対して推進する観点”というのは、国がすすめるIR事業と表裏一体のようで唐突な感が否めません。またギャンブル依存症に対する認知行動療法を主体とした標準的医療プログラムによる断ギャンブル率は、介入群は40%超に効果があったといいますが、6か月までしか調査しておらず、1年ないし2年、そして5年の調査がされていないことから、長期的に効果があるか疑問が残ります。施設基準のある依存症集団療法で新たに算定要件に加えるのではなく、精神疾患の療法の基本となる通院・在宅精神療法の点数を引き上げて評価すべきではないかと思います。
Ⅱ-7-5 小児医療、周産期医療、救急医療の充実

(7)妊産婦に対する診療の課題について、産婦人科以外の診療科と産婦人科の主治医の連携を強化しつつ、妊産婦への診療体制の改善には引き続き取り組むとともに、妊婦加算の扱いを見直す。

上記項目に対する意見
妊婦加算は胎児への影響に注意して医薬品を選択するなど、妊娠の継続や胎児に配慮した診療が必要であること、妊婦にとって頻度の高い合併症や診断が困難な疾患を念頭に置いた診療が必要であることなどを理由に適切な診療を評価したものでした。産婦人科以外の診療科と産婦人科の主治医の連携を強化する点については、一定の評価ができますが、妊婦加算を廃止すると、妊産婦に対する診療の技術料は全く評価されないこととなります。妊産婦に対する診療を適切に評価し、産婦人科以外の医師が妊産婦に対する診療を控えることの解消を図るためにも、基本診療料にて評価すべきであって、この評価は産婦人科以外の診療科と産婦人科の主治医との連携強化とは全く別の話です。依然として妊婦加算の存在意義及び必要性は損なわれていないのであるから、適切な医療の質を担保するためにも妊婦加算の廃止は反対です。
Ⅱ-11 医療におけるICTの利活用

(1)情報通信機器を用いて行う診療について、対面診療と組み合わせた活用を適切に推進する観点から、実施方法や対象疾患に係る要件等を見直す。

上記項目に対する意見
オンライン診療への評価につき、2018年度改定の結果検証調査では対面診療と比べ「十分な診察を受けられない」(14.9%)、「十分なコミュニケーションを取れない」(10.3%)と感じた患者はそれぞれ1割弱にとどまり、対面診療と比べて「受診する時間帯を自分の都合に合わせられた」(87.4%)、「待ち時間が減った」(90.8%)と感じた患者の割合が多く、「オンライン診療の手間や費用負担に見合うメリットがある」と感じた患者が79.3%に上るという結果が出ていますが、医療機関から見た意識と大きく異なります。これらは意識の調査であって、エビデンスではありません。緊急対応等の医療安全、患者の個人情報の流出の恐れ、オンライン診察に対する客観的なデータは少なく、有効性や安全性等が十分確保されるかは疑念が残っており、いまだ医学的エビデンスに基づく十分な審議がなされていません。 

また、2018年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査では、「対面診療と比べ、オンライン診療では十分な診察を行うことができないと思う」が診療所で51.5%、病院で37.8%もあります。現場の医師は聴・打診、触診、患者の何気ない仕草や雰囲気など患者の状態全体から得られる情報を総合的に診て、治療方針を決定しているなかで、画面を通したやり取りだけでは不十分だとの声が寄せられており、このような声を反映した結果だと考えます。こうしたことから要件を見直して広げることには反対です。

Ⅲ-3 質の高い在宅医療・訪問看護の確保

(1)地域における質の高い在宅医療の提供を推進する観点から、複数の医療機関が連携して行う訪問診療について、当該医療機関間において情報共有の取組を行った場合に、依頼先の医療機関が6か月を越えて訪問診療を実施できるよう要件を見直す。

上記項目に対する意見
「在宅患者訪問診療料Ⅰの2」について、情報共有などの要件を満たせば、診療依頼を受けた側が6か月を超えても訪問診療を可能とする見直しを歓迎します。しかしながら、一方の月1回の算定制限については言及がありません。保険医協会に寄せられる会員からの声ではむしろ月1回の算定制限に疑問を呈したものが多くなっています。2019年の4月に保険医協会が取り組んだ実態アンケートでは、「月1回の算定制限」について、「厳しい」との回答が74.3%、「Ⅰの2」の導入で診・診連携が推進されたか、との問いでは「推進された」がわずか1.6%という状況となりました。「月1回の算定制限」により、診・診連携が阻害されていることは明白です。また、このアンケートでは大多数の会員が「月の回数制限は設けるべきではない」と回答しています。月1回の算定制限の撤廃、もしくは大幅な制限緩和を求めます。

6か月の見直しについても、新たに情報共有が要件追加されていますが、この情報共有については口頭でも可能とするなど幅広く認めるよう求めます。またその際に文書で提供した場合は診療情報提供料を算定できることとするよう要求します。

(13)退院直後に小規模 多機能型居宅介護又は看護 小規模 多機能型居宅介護
(複合型サービス)を利用する医療的なニーズの高い患者について、自宅への生活へスムーズに移行できるよう、宿泊サービス利用中の訪問診療の要件を見直す。

上記項目に対する意見
小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護を利用する医療的ニーズの高い患者の宿泊サービス利用中の訪問診療の要件について、現在は30日ルールがあります。今回の改定で退院直後の患者について見直しを行うことは歓迎します。独居老人の増加に伴い一度も居宅に帰られずにそのまま施設に入る患者は今後もますます増えると思われます。こうした人々を在宅医療で支える体制づくりが一つ前進したことは評価すべきです。加えて、現在末期の悪性腫瘍の患者のみが30日ルールから除外されていますが、30日ルールの撤廃か、少なくとも別表7の患者については除外要件に追加するよう強く求めるものです。

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