新型コロナウイルスの感染拡大が全国で広がるなか、大阪府においてはこの数週間の重症患者数の増加が目立っており、大阪府の重症病床稼働率は約3割となっています(9月2日現在)。こうした状況下で現在、いわゆる「大阪都」構想の住民投票を予定通り11月に実施するかどうかの議論がされています。大阪府保険医協会は、会員医療機関(病院を除く)の正会員(4403件)を対象に「『大阪都』構想の住民投票」に関するアンケートを実施しました。大阪市内から150件、それ以外の府内市町村から183件、計333件の回答がありましたので、結果を報告します(8月27日現在)。
「大阪都」構想の住民投票を11月1日に予定通り実施すべきかの設問に対し、「実施すべき」との回答が、大阪市内は22件(約15%)、大阪市外からは30件(約16%)でした。「今は延期すべき」は、大阪市内では42件(約28%)、大阪市外は78件(約43%)、「住民投票そのものに反対」の意見が大阪市内は81件(約54%)、大阪市外は70件(約38%)という結果になりました。
住民投票の実施については、回答者数の約8割が延期すべきもしくは反対と回答しています。理由としては、「この状況でするなんてありえない。一度限りのはず」「大阪市民だけでなく府民も投票に参加すべき」「仮に実施するとしてもコロナ感染とコロナ経済低下のため延期すべき」「税金の無駄遣い。一度否決している」などが挙げられています。
つづいて、「大阪都」構想になると大阪市が廃止されることを知っているかとの問いには、大阪市内で「知っている」が104件(約69%)、大阪市外で88件(約48%)、「知らない」と答えたのは大阪市内で44件(約29%)、大阪市外で90件(約49%)でした。
大阪市内の回答者の約3割は大阪市が廃止されると政令市には戻れないことを知らないと回答。大阪市外では約半数の回答者が「知らない」と答え、「知っている」と答えた件数を上回りました。
現在の大阪市が、いわゆる「大阪都」構想によって4区の特別区になると、今までの政令市としての大阪市は廃止され、4つの独立した地方自治体となります。それゆえに、政令市として大阪府の事業の一部が移譲され、財源も権限も大きかった今までの大阪市の形はなくなります。
「大阪都」構想案の内容を理解していない割合が少なくない現状が明らかになり、市民への「都」構想の説明会も十分に開けていない状態で、十分な周知がされているとは言えない状況が鮮明になったのではないでしょうか。
現在出されている「大阪都」構想案についての問いに対し、現状案で住民投票を実施すべきとの回答が大阪市内で22件(約15%)、大阪市外で46件(約25%)でした。「廃案にすべき」が大阪市内は74件(約49%)、大阪市外は58件(約32%)で、「検討し直すべき」は大阪市内で38件(約25%)、大阪市外からは58件(約32%)の回答が得られました。
新型コロナウイルス感染症が拡大するなか、「大阪都」構想案が出された当初の情勢からインバウンドの経済効果なども含め、市民・府民の生活が180度変わっている状況の今、現状の「大阪都」構想案について否定的な意見が多数を占める結果となりました。
「都」構想の説明不足が明らかな現状
アンケートでは「都」構想の反対意見多数
そもそもの「大阪都」構想の賛否については、大阪市内21件(約14%)、大阪市外46件(約25%)が賛成、大阪市内96件(約64%)、大阪市外80件(約44%)が反対という結果になりました。
また、「どちらともいえない」という意見が市内・市外で平均2割強もあることから、「大阪都」構想の賛否をつける判断材料が不十分であると推測されます。
大阪府に対して要望すること(複数回答)では、大阪市内・市外ともに、PCR検査の拡充や医療機関への財政支援、医療物資の確保・供給支援が上位を占めました。
大阪府では、連日重症患者数が増えています。コロナ対策に追われている医療機関のみならず、収入減や解雇問題、高齢者は外出すらままならず、コロナ禍によってさまざまな問題を抱える市民全てに「大阪都」構想の是非を「いま」問う余裕があるのでしょうか。
「大阪都」構想の住民投票を実施するのであれば、コロナの感染拡大が落ち着いたとき、その時の社会情勢を踏まえ改めて案を出し、その案について議論を重ね、市民・府民への周知を徹底したうえ、投票を実施すべきではないでしょうか。
コロナ禍のなか市民・府民への理解も十分に得られないまま住民投票の実施を急ぐ姿勢に疑問を抱かざるを得ません。
大阪府保険医協会は住民投票よりもコロナ対策に集中するよう大阪府・市に求めています。
アンケートに寄せられた要望にもあるように、大阪府はまずコロナ対策に専念するため、「大阪都」構想の住民投票に充てる職員・予算をPCR検査の拡大や、疲弊している医療機関への財政や物資の支援にまわして、コロナ感染拡大防止を最優先事項と捉えて対応すべきと考えます。「大阪都」構想の賛成、反対に関係なく、「いま」議論すべきことは、コロナの感染拡大防止のためにできる施策ではないでしょうか。
寄せられた声より
- 維新の政策はカジノ誘致で嫌になった。万博もやめてほしい。吉村さんも当初は評価していたが「イソジン発言」や「大阪は早期に人工呼吸器導入発言」でぼろが出た印象。
- 大阪市を廃止し、分割しても二重行政は起こりえる。
- 都構想で何がどうなるのか。誰が得するのか。誰が損するのか。未だにさっぱりわからない状態です。
- 府・市の二重行政をなくすというのであれば、堺市も大阪都へ編入する必要と思われるのでいったん取り下げて改めて検討すべきであろう。
- 府知事の再々の失言に対し厳重な抗議を要請したいと思います。大阪の重症コロナの増加をことさら軽く見せよう、経済活動をなんとか優先させようとする意図的発言を放置してはいけないと思います。
- 知事の不十分なエビデンスに基づいた不用意な発言でイソジンの供給に支障をきたしています。責任をとって医療機関に十分供給されるよう早急な対応を望みます。