“生きること”を諦めさせる高額療養費制度の限度額引き上げは撤回しかない
内閣総理大臣 石破 茂 様
厚生労働大臣 福岡 資麿 様
2025年3月1日
大阪府保険医協会
政策調査部長 斉藤和則
国会で今、最大の焦点になっている政府の高額療養費制度の限度額引き上げをめぐる動向は、2 月に入って患者本人、患者団体、医療に携わる多くの方から引き上げの全面凍結・白紙撤回を求める世論が急速に広まり、政府が「一時的に凍結する」「再検討する」という状況まで追い込んでいます。
こうしたなか、2月28日の衆議院予算委員会で、石破茂首相は、立憲民主党の野田佳彦代表からの質問に対し「10年間の物価動向を踏まえたものなので、今年8月からの定率引き上げは実施したい。26年以降の引き上げについては 25年秋までに関係者の声を丁寧に聞いて結論を出したい」と答弁し、26年度以降は検討するようなことを発言しています。しかし、そもそも「見直し」案は法案ではなく、予算案の中で審議されるものであり、当然、26年度予算では当初「見直し」案通りに進めるのか否かは、引き続き審議されるはずです。つまり、世論を気にして如何にも患者団体などの声を受け止めているポーズはするものの、“お茶を濁す”程度の修正どころか、本質的には当初の引上げ案を強行する姿勢を示していることになり、この誤魔化しの答弁に怒りさえ覚えます。
石破首相は答弁で今年8月からの引上げは「10年間の物価動向を踏まえたもの」と述べていますが、全国がん患者団体連合会の患者アンケートでは、物価高騰で毎月の出費が増えるなか、子どもたちを育てるお金も増え、「子供たちを残したまま生きるのを諦めなければならないのか」という声がたくさん寄せられています。国のがん対策は、誰一人取り残さないことが柱だった思いますが、がん患者さんたちの命と引き換えに、社会保険料の負担を減らされて、国民は喜ぶと政府は思っているのでしょうか。
来年度の予算を見ると、政府は「財源がない」と言う一方、今“日本を守る”ということで、防衛費を3年前までは5兆円程度だったものを、8兆円と急激に予算を増やしてきています。国民の命を守ることを投げ出して、“日本を守る”というのは本末転倒ではないか。“生きること”を諦めさせることが、政府のすることなのか。即刻、高額療養費制度の限度額引き上げは白紙撤回することを強く求めます。