報道関係各社 御中
内閣総理大臣 石破 茂 殿
厚生労働大臣 福岡 資麿 殿
昨年12月25日、2025年度予算編成に向けた福岡資麿厚労相と加藤勝信財務相による大臣折衝において、高額療養費制度の自己負担限度額引き上げについて合意がなされた。
所得区分を細分化し自己負担限度額を段階的に引き上げる計画となっており、全ての所得区分において引き上げられる。70歳未満で所得層年収650~750万円の場合、現行の約80,100円から、2027年8月以降は約13万8600円へと月額5万円以上の大幅な引き上げとなる。
高額療養費制度は大きな病気で高い医療費を支払わなければならない時に、医療費負担が重くならないよう負担を軽減する“セーフティネット”として重要な役割を果たしている。一部の人だけが活用するものではなく、全世代にとって重要な命綱とも呼べるものである。今回の見直しは患者・国民への自己責任を強要する、まさに命と健康を脅かすものだ。これほど大きな影響を及ぼす見直しにも関わらず、患者団体にヒアリングを行うこともなく、国会審議も何らないまま大臣折衝合意で進められた点も大きな問題である。
高額療養費見直しで生じる給付費の減少のうち、患者負担が増加すると受診控えにより医療費が削減されるとする、いわゆる「長瀬効果」による減少分として約2270億円を見込んでいることが、社会保障審議会・医療保険部会の資料でも示されている。厚労省の試算に、受診抑制つまり患者が治療を諦めることを織り込んでいることは極めて重大な問題であり、医療費の支払い困難により治療を諦めるようなことはあってはならない。
患者団体や国民からの大きな反発の声を受け、「多数回該当」については現行の上限額を据え置きとする修正案が検討されているが、それでは不十分である。多数回該当者は155万人と高額療養費制度の全利用者795万人の2割に過ぎず、残りの640万人は重大な影響を受けることに変わりはない。全国がん患者団体連合会の天野慎介理事長も、「いったん凍結をお願いしたい」と訴え、引き上げにより自己負担上限額に達しなくなり多数回該当から外れる患者が生じる懸念を示している。
政府は患者団体をはじめ、国民の声に真摯に耳を傾け、その場しのぎの修正でごまかすのではなく、一刻も早く見直しの「白紙撤回」をすべきである。
2025年2月25日
大阪府保険医協会
理事長 宇都宮 健弘
政策調査部長 斉藤 和則
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電話 06-6568-7721