報道関係各社御中 大阪府保険医協会は24年度の診療報酬改定で下記の理事会声明を発表しました。
6期連続の2024年度診療報酬のマイナス改定に断固抗議する
「本体」プラスも賃上げ・物価高騰対応のための抜本的な引き上げには程遠い
2024年度の診療報酬改定について、厚労省は20日、「本体」部分を+0.88%、「薬価等」部分を-1.00%、全体で0.12%のマイナス改定とすることを発表した。
「本体」部分のうち、賃上げ対応に大部分をあてるとされ、賃上げ・物価高騰対応のための「診療報酬の大幅引き上げ」を強く要求した全国1万3千人の保険医協会会員署名など医療現場の要望に一定応えたものであるものの、到底足りないことには変わりない。
用途が限定されない本体財源は+0.18%に留まるうえに、「生活習慣病を中心とした管理料や処方箋料等の再編等の効率化・適正化」で-0.25%とされたことは、納得がいかない。地域の医療を支えている診療所が算定する項目が引き下げられ、大きな打撃を受けることを強く危惧する。現在医療機関が抱えている諸問題は、抜本的な引き上げを行わない限り何ら解決できず、長年の低医療費政策のもと6期も連続でマイナス改定としたことに断固抗議する。大阪府保険医協会は、診療所の経営を守るためにも、初・再診料を中心とした基本診療料の大幅引き上げを政府・厚労省に強く要望していく。
先発医薬品(長期収載品)の一部保険はずしに断固反対
今次改定のなかで、またしても“保険はずし”が盛り込まれ、先発医薬品(長期収載品)の患者負担引き上げが来年10月から実施されることとなった。長期収載品の患者負担に選定療養(※)の仕組みを導入し、後発医薬品の最高価格帯との価格差の4分の1を保険給付の対象外とする内容(後発医薬品の上市後5年以上経過したもの又は後発医薬品の置換率が50%以上となったものが対象)で、1割負担の場合で先発品500円、後発品150円のケースでは、患者負担は50円から138円となり2.76倍も増加する。先発品の使用に対するペナルティと言わざるを得ないうえに、差額には消費税の上乗せもあり、納得できるものではない。
今、医療現場は医薬品供給不足が深刻である。当会が10月に実施した調査でも「他剤に切り替え」「休薬した」ことで患者の治療に深刻な影響が出ている。また、11月に実施した「後発医薬品への切替えまたは使用による弊害」調査では、先発医薬品と後発医薬品の「同等性」を疑問視する意見に加えて、後発医薬品の基剤の違いなどの問題で、効き目や使用感、副作用などに違いがあることによる弊害事例が多数寄せられた。ペナルティが課されることで、最適な薬を選択することができず健康へ悪影響を及ぼすことが強く危惧されるなど、患者の利益にならない。
そもそも、現在もあらゆる医薬品が不足し、診療にも大きな影響が出ている最中に、こうした患者負担を提案すること自体が言語道断である。今回の先発医薬品の保険はずしは、後発医薬品への誘導となるため、現在の医薬品流通不足に拍車をかけ、医療現場が更に混乱することは明らかである。政府・厚労省がまずやるべきことは、更なる後発医薬品の使用促進策ではなく、医薬品の流通の安定させることである。先発医薬品(長期収載品)の一部保険はずしの実施中止を強く求める。
医療DXの推進は一旦立ち止まれ
医療DXは、マイナ保険証とオンライン資格確認システムを基盤とするとされているが、マイナ保険証においては紐づけ誤りやデータの間違いなどのトラブルだけでなく、そもそも住民基本台帳との情報不一致で登録できないケースがあることなどが明らかになっている。当会が実施した10月以降のオンライン資格確認・マイナ保険証に関するトラブルアンケートでも、6割以上の医療機関がトラブルを経験しており、「資格情報が無効」や「負担割合の齟齬」など保険診療に重大な影響を及ぼすトラブル事例が多数寄せられている。この様な状況で、その上に新たなシステムを構築・連携すれば、データの不一致等トラブルが発生した際の影響は計り知れない。拙速な推進は見直すべきである。
私たちは引き続き、医療機関が安心・安全な医療提供体制を担保するために、日常診療が必要とする診療報酬の改善を求めるとともに、患者にこれ以上の負担をさせない運動を進めていく決意である。
2023年12月23日 大阪府保険医協会 第6回理事会
(※)選定療養費
患者が選定し、特別の費用負担をする追加的な医療サービスのこと。差額ベッド料や180日を超える入院、大病院への紹介状なし受診などに適用されている。