【理事会声明】医療現場を混乱させる度重なる知事の安易な会見発言 知事の発言は住民の命と健康に関わることを肝に銘じて猛省を

大阪府保険医協会は吉村知事のイソジンに関わる発言について以下の声明を発表しました。

医療現場を混乱させる度重なる知事の安易な会見発言

知事の発言は住民の命と健康に関わることを肝に銘じて猛省を

8月4日、吉村洋文大阪府知事は「うそみたいな本当の話」として「うがい薬でうがいをすると新型コロナウイルスの陽性者が減っていくのではないかという研究結果がでた」とし「コロナに効くのではないか」と述べて今月20日までの間を「強化月間」として積極的にポビドンヨードが含まれるうがい薬(いわゆるイソジンガーグルなど、以下ポビドンヨード)をつかってうがいをするように呼び掛けた。

多くの医療関係者が耳を疑った。

ポビドンヨードを使いすぎるとかえって甲状腺機能を低下させることや、これまでの研究で、感染予防にはポビドンヨードより水うがいの方が優れているとの結果が出ており、ポビドンヨードの使用は口腔内の正常細菌を破壊し、希釈が不十分だと粘膜障害を招く可能性があることは医師・歯科医師・薬剤師などの間ではよく知られている。ポビドンヨードは、現在は簡単に購入できるが、本来は医師や歯科医師、薬剤師の指導が必要な医薬品である。

ポビドンヨードが新型コロナウイルスに効くという臨床結果は出ておらず、厚労省も「効果があるというのには時期尚早」としている。また、1日4回のうがいによりコロナ感染疑い患者に対するPCR検査や抗原検査の「偽陰性」が増加する可能性もあるのではないか。翌5日の記者会見でも今回の発言は知事個人の発言か研究成果を基にした発言かとの質問もだされている。そもそも、PCRが陰性であることと、感染を制御することはまったく別問題である。

知事は報道側の姿勢の問題を指摘しているが、先のワクチン開発をめぐる発言も含めて、医薬品やワクチンなど医療に関わる人間なら簡単に「効く」「効果がある」、「治験の対象者は〇〇」などは発信できるような内容でない。吉村知事の発言は、“知事”という立場からすればあまりにも無責任な発言で、患者からうがい薬の処方について「保険で処方は可能なのか」「投薬期間はどこまで可能か」など質問され、ただでさえコロナ感染症への対応に逼迫する医療現場は混乱させられている。現にワクチン開発では開発企業であるアンジェス(株)がすぐに知事発言を否定している。また、発言が軽率なばかりでなく、特定の商品を並べた会見は、宣伝であるとの誤解を招く点からも政治家の会見として不適切である。関連会社の株価が急騰し、インサイダーを疑う声が出ても仕方がないことである。

「買占めをしないで」といくら言っても「強化月間」を指定し「効果がある」という発言は当然住民の気持ちを煽ることになり、現に放送直後からポビドンヨードが薬局などで売り切れ続出し、薬事法違反が疑われるネットでの転売も出ており、医療機関にすでに入荷ができない状態である。

医療をめぐる、特に医薬品やワクチンなどには、国民に提供できるまでに複雑な基準や規制、ルールがある。それは知事という立場であっても無視することはできないものである。医薬品の不足は人命にかかわることである。吉村知事には自身の発言が招いた事態を鑑み、知事の発言は住民の命と健康に関わることを肝に銘じ、猛省してもらいたい。

2020年8月6日
大阪府保険医協会第20回理事会


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