2016年診療報酬改定答申に対する大阪府保険医協会談話

 中医協は2月10日総会を開催し、「平成28年度診療報酬改定」にかかる答申を行った。

 財務省は社会保障費を抑制するため医療費を第一のターゲットとして診療報酬のマイナス改定をもくろんできた。その背景には安倍内閣が「骨太方針2015」で、高齢化などによる社会保障費の自然増(通常1兆円)を毎年5000億円程度に抑えようという医療「構造改革」路線がある。

 今次改定において本体を0.49%引き上げる一方で、薬価・材料を1.33%引き下げた。そのほか薬価再算定の0.19%(通常)と0.28%(特例)の引き下げ等を含めると、全体ではマイナス改定となる。財務省の求める少ない財源の枠のなかでの改定では、医療の改善につながるとは考えられない。

 

 今次改定は2018年の医療・介護同時改定を見据え、さらに2025年に向けて「地域包括ケアシステムと効果的・効率的で質の高い医療提供体制の構築を図る」「地域包括ケアシステムの推進と医療機能の機能分化・強化、連携に関する充実等に取り組む」としているが内実は現場に安上がりの医療・介護体制を強いるものとなっている。

 

 入院では急性期医療において重症者への絞込みを狙い、「7対1入院基本料」の病棟に重症患者の割合を15%以上から25%以上に引き上げ、さらに自宅等へ退院させる割合も75%以上から80%以上に引き上げる。また「10対1入院基本料」の病棟への重症患者の受け入れを評価し、患者の締め出しを狙っている。

 その受け皿として“地域包括ケアシステム”の名の下に、“かかりつけ医”の普及を図ろうとしている。前回改定で新設された地域包括診療料・同加算の届出が少なかったため、常勤医師の配置基準を緩和した。そして認知症と他の疾患のある患者を対象にした認知症地域包括診療料・同加算を新設した。さらに小児の分野においても、1医療機関での常時対応等を評価する「小児かかりつけ診療料」を新設した。患者によっては複数科で受診が必要な場合があり、1つの医療機関に縛り付けるとかえって連携を阻害し、患者にとってより良い医療を提供できない。

 在宅医療において、在宅時医学総合管理料等に「患者の疾患・状態に応じた評価」が導入されたが、重症患者以外の点数を下げることは在宅医療の質と量の低下につながりかねない。さらに「単一建物診療患者」数により分けられ低い点数が設定された。患者の病態は一人ひとり違う個々のものであり、このようなやり方は撤回すべきである。

 薬剤について、いわゆる湿布の保険はずしは、われわれと患者との連携により運動がすすみ、直接的な保険はずしは行われなかったが、1回あたりの処方枚数の制限が行われた。また調剤において、「分割調剤」の導入も図られた。これらは医師の処方権に対する侵害である。

 

 大阪府保険医協会は地域医療を充実したものにするため、正当な診療報酬のプラス改定を求める。

 今後、効率化の名の下に「川上から川下へ」の改革、OTC薬の保険はずし等をはじめ診療報酬にさらなる大ナタを振ってくるだろう。医療機関と患者が望む医療が安全安心で実行できるような診療報酬改定を求め続ける。

2016年2月15日
大阪府保険医協会 副理事長 中野明弘

 


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