病院のヘルスケアリートについて

(2014.12.5大阪保険医新聞)

「わが国の医療制度の根幹に抵触しかねない」厚労省委託の調査研究報告書が指摘

大阪府保険医協会は、国土交通省が今年5月、「高齢者向け住宅等を対象とするヘルスケアリートの活用に係るガイドライン(案)」(以下、ガイドライン案)に関する意見を募集した際、「ガイドライン案」には、サービスを受ける利用者の「生活」や「健康」そしてその家族の視点にたったコメントはひと言もなく、あくまで「投資家保護」の観点しか記述が無いとし、もし投資家が一斉に引上げてしまった場合、「利用者」はどうなるのかというリスクはつきまとうと指摘しました。そして、「ガイドライン案」では、「関連省庁」との連携の下、ヘルスケア施設の取引に際し留意すべき事項を示すとあるにも関わらず、「関連省庁」である国会の厚生労働委員会では全くとりあげられず、「細部まで議論をしたのか疑問がある」とし、運用の可否も含め、国会での慎重な審議なしに進めることに反対」の意見を上げました。

こうしたなか、現在「病院等を対象とするヘルスケアリートの活用に係るガイドライン検討委員会」(国土交通省)で病院と対象にしたヘルスケアリートについて9月26日から議論が開始されています。

 

「市場動向によっては賃貸料の値上げが突きつけられる」
「建替え・改修等が保証されない怖れ」
「最後の安全弁の資産を放棄してしまうことになる」

「病院に強いてリートを進める理由は乏しい」(報告書より)

今年3月、厚生労働省医政局から委託された明治安田生活福祉研究所が、「医療施設経営安定化推進事業―医療法人等の提携・連携の推進に関する報告書」(以下、報告書)で味深い報告を出しています。この報告書は「非営利ホールディングカンパニー」「ヘルスケアリート」「社会医療法人」の3分野について調査研究し報告しています。

この中でヘルスケアリートについて「投資家保護の観点から(略)オペレーター(※施設管理者)への要求項目ばかり上げているが、オペレーターの権利義務や施設利用者の保護については考慮すると記しているのみで何ら具体策は示されていないようにみえる」と指摘しています。そして「施設利用者保護についての検討が判然としないままヘルスケアリート利用が喧伝されている」とまで述べています。

現在検討されている病院対象のヘルスケアリートについては、「患者がいる限りサービスを継続することが必要であり、他産業のように安易に撤退できない」こと、「(不特定多数の投資家が投資するため)各種経営指標の維持や向上の義務化などによりモニターが入り、実質経営介入が可能」と指摘し、リート側から見れば病院への投資は多くの選択肢の一つでしかなく、「経営のよい病院に利用は限られる」と報告しています。この他、「市場動向によっては賃貸料の値上げが突きつけられる」「建替え・改修等が保証されない怖れ」「最後の安全弁の資産を放棄してしまうことになる」とデメリットについても具体的に指摘し、「むしろデメリットが目立ち、またわが国の医療制度の根幹に抵触しかねないところもある」とし、「病院に強いてリートを進める理由は乏しい」と結論づけています。

大阪府保険医協会は、こうした資料をもとに、11月17日、厚労省と国交省に対して、病院へのヘルスケアリートについて、国会での慎重な審議強く求めるとともに、ヘルスケアリートの病院への活用しないよう強く求めました。


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