大阪府地域医療構想(案)への大阪府保険医協会のパブリックコメント

第4章 医療需要・必要病床数の推計と構想区域の設定 について

受診抑制の実態を反映していない推計
治療に専念できる入院医療提供体制の確保を
  • 医療需要はレセプトデータを使用した「医療資源投入量」を基準に算出されているが、そこには何らかの理由(医療機関の不在や経済事情からの受診控え等)で受診ができていない患者のニーズが反映されておらず、本来の医療需要とはいえない。
  • 実際に、大阪府保険医協会が2014年12月に実施した「医療現場から見える貧困調査」でも医科で6割以上、歯科では9割近くが「この半年間で治療中断の事例」を経験したと答えており、様々な要因から患者の自己判断で必要な治療を中断している実態が明らかになった。また、国立社会保障・人口問題研究所が5年毎に実施している「生活と支え合いに関する調査」では、「過去1年間に必要な医療機関受診ができなかった個人」が、調査回答者全体の14.2%も存在することが明らかにされている。
  • そもそも、データにもとづく全国一律の算定式では、地域の実情が充分考慮されているとは言えない。
  • 各二次医療圏の中でも地域によって病院数や病床機能、診療科の偏りがあり、地域だけで医療提供体制を完結させるのは現実的ではない。
  • 充分に病態が改善・安定しないまま退院させられている患者がいる実態がある。「治るまでは入院させてほしい」との患者の願いに応え、落ち着いて治療に専念できる入院医療提供体制の確保が大阪府に求められているのではないか。
  • 必要病床数の推計では急性期病床が過剰となっているが、各地域医療構想懇話会では「急性期病床を削減すれば、在宅医療を受ける患者が急変した際の受け入れが困難になる」などの意見が出されている。現在でも、「急変時に入院先を探すのに苦労する」との声が多くの開業医から出されており、更なる病床削減は困難な実態にある在宅医療の現場を更に疲弊させることにつながると危惧する。

第5章 将来あるべき医療提供体制を実現するための施策の検討 について

保健医療計画と大きく矛盾する必要病床数
医療・介護現場の実態を重視した対応を
  • 2014年度の病床機能報告に基づいて2025年の必要病床数との過不足が出されている が、そもそも2014年度の病床機能報告は約6,000床が未報告又は無回答である上に、4機能の選択については各病院の判断に委ねられており、同じ機能を選択している場合でも行われている医療の内容等が必ずしも同じではない場合があるなど、極めて不安定な根拠に基づいた数字である。
  • また、現在の病床数が2025年の必要病床数に比べて約1.6万床不足していると推計している地域医療構想に対して、現時点でも約2万床の過剰となっている保健医療計画の基準病床数との整合性をどう取るのかが具体的に示されていない。この問題が解決しない以上、病床の機能分化・連携の推進に関する協議を進めることに大きな矛盾を感じる。
  • こうした問題を解決するためにも、基準病床や必要病床数の推計を議論の中心に置くのではなく、医療・介護現場の実態を重視した対応を求める。
在宅医療の担い手は圧倒的に足りない
強引な在宅医療誘導は甚大な影響及ぼす
  • 政府による「入院から在宅へ」の医療政策の中、在宅医療のニーズが急増することが医療需要推計からもみてとれる。しかし、地域によっては新規開業が少なく開業医の高齢化が進むなど、在宅医療に取り組む医療機関が少ない等の実態がある中、2025年に1日当たり約16万人もの在宅医療等の医療需要に対応できるのか甚だ疑問である。そもそも、在宅患者の症状や重症度が様々であり、更には、病床削減などの影響で今後、重症患者が在宅医療へ移行されるとなると、1日当たり何人を診ることができるのか不明瞭である。そうした実態から考えると、府内の医師数は圧倒的に足りていない。
  • また、看護師や介護職、在宅で抱えきれない患者を受け入れる特別養護老人施設や老人保健施設などの施設も少なすぎるのが現状である。
  • 在宅医療の提供体制については、地域医療介護総合確保基金等の財源を活用した取り組みで在宅医療の担い手を増やしていくとしているが、診療報酬改定等の影響を考慮すると、地域での取り組みだけで在宅医療の提供体制が充分に確保できるのか、不安は増すばかりである。また、施設入居者への対応と個別住居者への対応について区別した記載がないことは、診療報酬上の問題点や医療現場の実態が充分に反映されておらず大変問題である。
  • さらに、無理な在宅誘導で、医療・介護現場の過重労働や経験不足などを原因とした事故等の増加が強く懸念される。その他、独居患者の生活実態や在宅患者を支える家族の負担を考えると、強引に在宅医療に誘導することは国民生活に甚大な影響を与えると危惧する。

第6章 地域医療構想策定後の実現に向けた取組み について

地域医療構想に現場はもちろん、
府民や患者・利用者の声を反映させる場の設置を
  • 各2次医療圏での地域医療構想懇話会や保健医療協議会で出された意見は、今後の協議にどのように取り入れられるのか。地域医療構想懇話会や保健医療協議会では、地域毎の特徴や地域が抱える問題に根付いた意見が出されており、そこで指摘された問題点が今後の協議に反映されるのかどうかが不明瞭である。結論ありきで協議が進み、出された意見が単に聞き置かれるということにならないか強く懸念する。
  • 地域医療構想策定後の検討体制のイメージ(図16)では、運営の中心に保健所と書かれているが、そもそも大阪府内の保健所は数が少なく、どこまで地域の実態に即した対応ができるのか疑問である。
  • 『各地域医療構想調整会議は幅広い関係者で構成する』と書かれているが、構成員には各団体のトップだけでなく、実際に現場で働いている人を入れるべきである。
  • また、病院完結型から地域完結型へと医療・介護の形が変えられることに不安の声や問題点を指摘する声が出されている中、病床削減ありきで策定が進められている地域医療構想に府民や患者・利用者の声を反映させる場が設けられていないことは、大変問題である。
  • 医療・介護現場の実態は日々変化している。数年先を充分に予見することは不可能に近い。地域医療構想や保健医療計画は一年ごとに見直し、再検討することが必要ではないか。
  • P.72の『都道府県知事による対応』については、わが国の戦後医療におけるフリーアクセスの根幹を担う「自由開業制」を崩壊させる可能性が高いとの指摘がある。そのため、大阪府では『都道府県知事による対応』に書かれているような措置等は実施しないと明記すること。

第7章 まとめ(今後留意すべき点) について

多様な問題のベースにあるのは貧困問題
大阪府が責任もって医療・介護提供体制の確保を
  • 「大阪府地域医療構想(案)」全般に渡って、大阪府の対応については何ら具体的に書かれていない。地域や厚生労働省マターとはせず、大阪府が責任もって府内各地域の医療・介護提供体制を確保すること。
  • 保健医療計画や健康福祉関連計画との整合を図るとしているが、現場や地域実態にきめ細やかに対応した内容でなければ、府民のいのちやくらしを充分に守ることの出来る医療・介護提供体制を整えることはできない。大阪府独自の調査を行うなどして、府民の望む保健医療福祉施策の推進を図ること。
  • 大阪府や各自治体が抱える多様な問題のベースには貧困の問題がある。高齢者だけをとってみても、少なすぎる年金だけで生活しているが為に、必要とする医療や福祉サービスを受けることができないばかりか、食べることにも困り、身体を弱らせている人は多い。府民の貧困問題に目を向け、その対策を早期に実施しなければ、様々な問題は解決できない。貧困問題への対応についても、大阪府地域医療構想で触れるべきである。

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