介護保険法等の一部を改正する法律案の採決強行に抗議する
- 2017/5/25
- 私たちの考え
介護保険法等の一部を改正する法律案の採決強行に抗議する
政府は、5月25日、参議院厚生労働委員会において「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案」の採決を強行した。
今回の法案は介護だけでなく、障がい者、子ども、生活困窮者など国民生活と福祉全般に幅広くかかわる31本もの異なる分野の法律の改正を一括で提案している。本来なら徹底した審議が必要にも関わらず、衆議院の審議は22時間、参議院においては16時間と超短時間の審議で採決を強行した。
介護保険制度の見直しでは、「現役並み所得者」の利用料3割化など新たな負担増が盛り込まれている。国会審議でも、2015年の利用料引き上げの検証もされないまま3割負担を求めることについては、懸念の声が相次いだ。一昨年8月から2割負担が導入されて以降、負担に耐え切れず特別養護老人ホームを退所したケースやサービスを控える事例が生まれている。
法案では、「自立支援、重度化防止」の取り組み強化をかかげ、介護費用を抑制した地方自治体に国の財政支援を手厚くするという仕組みが設けられている。審議では「市町村に認定率の低下を競わせ、介護制度からの『卒業』を迫る圧力として働くのではないか」との指摘も出された。
また、全国の病床15万床削減の受け皿としての「介護医療院」創設や、介護保険料の引上げにつながる「総報酬割」の導入も盛り込まれている。
この他、今回の法案には「地域共生社会の実現」の名の下、高齢者・障害者などの施策に対する国や自治体の公的責任を大幅に後退させ、 「『我が事・丸ごと』地域づくり・体制の整備」を打ち出し、福祉サービスを必要とする人たちを“地域に丸投げ”して「地域住民が支援する」ことを求める条文を社会福祉法に新設するとしている。
今回の法案は社会保障制度の根幹に関わる問題で、いくつも問題点が指摘された。しかし、かつては採決の“条件”ともいえた「地方公聴会」すら衆参両院で開かず、わずかな時間で審議を打ち切り、採決を強行したことは国会軽視もはなはだしい。
貧困と格差の広がり、年金制度への不安が募る中、これ以上の負担増はもう限界であり、お金がないためにサービスが受けられない高齢者が増えている。今回の法案は「高齢者の尊厳」を著しく蔑ろにするものである。
こうした国会運営は、議会制民主主義を否定するもので、われわれは今回の委員会の強行採決に強く抗議する。
2017年5月25日
大阪府保険医協会第16回理事会