【理事会声明】12/27、妊婦加算 、産科・ 産婦人科特例加算 凍結についての理事会声明を発表しました
- 2018/12/28
- 私たちの考え
妊婦加算、産科・産婦人科特例加算凍結についての大阪府保険医協会理事会声明
2018年12月27日
大阪府保険医協会理事会
2018年4月の診療報酬改定で新設された初・再診料の妊婦加算、産科・産婦人科特例加算が、2019年1月1日から厚生労働大臣が定める日まで算定できないとされ事実上、凍結される。
これらの点数は中医協で①胎児への影響に注意して医薬品を選択するなど、妊娠の継続や胎児に配慮した診療が必要であること、②妊婦にとって頻度の高い合併症や診断が困難な疾患を念頭に置いた診療が必要であることなどを理由に適切な診療を行うことを評価した加算として新設された。われわれは「加算点数」ではなく、医師の技術料は本体点数(基本診療料)の引き上げで対応すべきとの立場であるが、患者が受ける医療の質を担保するものであり、さらに医師の技術に対する評価とされたものであり、われわれはこの加算点数が設けられたことは評価すべきものとしていた。
■異例の手続きであり、決して容認できない
まず手続き上の問題を指摘したい。この点数が新設されたのは、日本産婦人科学会や日本産婦人科医会等が妊婦患者の対する診療にあたって、細心の注意や配慮に時間をかけて行う評価として長年議論し、要望してきたことが大きい。時間をかけ、積み上げてきた議論を、いとも簡単に自民党の厚労部会等が政治力を持って覆したことを批判したい。当該部会は国民世論というかもしれないが、その根拠を示していない。また中医協で凍結を決定したではないかというかもしれないが、中医協では今回の問題を十分な議論をせず圧力に屈して決定した。そもそも中医協は、法律に基づき設置され、国民の医療の質を担保するために議論し決定する重要な厚生労働大臣の諮問機関であり、それを飛び超えて、政治的圧力で変えることができるのならば、他の診療報酬点数でも同じようなことが起こりかねず国民皆保険制度の維持にとって重大な問題であり、今後このようなプロセスで診療報酬の改廃を決めてはならない。
■厚労省の周知徹底不足を指摘したい
今回、妊婦患者からSNSや報道等を通じて妊婦加算等が批判を受けたのは、医療現場で後から妊婦と分かって加算したことなど報道されているが、このようなことが事実ならば医療担当者として反省すべきことと受け止めている。批判の言葉には「妊婦増税」「妊婦に優しくない」「少子化対策に逆行する」等が示されている。そもそも診療報酬の説明を医療現場に任せ、厚労省は国民に周知徹底していなかったことが大きいと考える。この機会に改めて言いたい、診療内容、治療内容、指導内容の説明はわれわれにあり、明細書発行の義務化にあたって、診療報酬点数の説明義務は厚労省にあると言ってきた。今回の「妊婦加算」という名称は誤解を生む余地があったと言わざるを得ない。
■患者負担を引き上げてきた政府の責任を問う
本来、診療報酬は医療技術等の正当な評価を通じて、医療の原資を保障し、あるべき医療の水準を規定するとともに、患者の受ける医療の質を担保するものである。しかし、診療報酬として評価されるほど、多くの患者には一部負担金として跳ね返る仕組みとなっている。
また、今回の妊婦加算新設は中医協の審議をへて厚労大臣が諮問したものであり、当然、与党が了承しているもとで、実施されたものである。
今回の事案に対して、自民党の厚労部会は「妊婦さんに自己負担を発生させることは容認できないというのが部会の総意だ」と、あたかも第三者のように言い放ち、妊婦の味方を気取るのは政権与党としての当事者能力も責任も欠如しているとしか言いようがない。
そもそも、患者に医療に対するコスト意識を要求して、患者一部負担金を引き上げてきたのは歴代の政府・与党である。その責任を棚上げにせず、政府・与党としての責任を自覚すべきである。
われわれはすべての患者の一部負担金の引き下げを求めるものである。
■妊婦患者の一部負担金の軽減を
政府も言う「少子化対策」として、妊婦患者に対する医療費助成制度は必要ではないか。現在、全国のいくつかの県で妊産婦に対する医療費助成制度が実施されている。疾病に対する制限を設けていない県もある。また今回の事案において、妊婦の負担がゼロになるよう手当を新設すると厚労省が検討したとの報道があり、これを前向きに進め、政府は地方自治体にならって、妊産婦に優しい制度を創設するか負担軽減をとるべきである。
この件についてのお問合せは大阪府保険医協会・上原もしくは大谷までお願いいたします。
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