〈第17回〉メディアの後押しで増大する維新首長の人気

ノンフィクションライター 松本 創

これは徹頭徹尾メディアの問題である──。2015年に刊行した拙著『誰が「橋下徹」をつくったか』の中で、そう書いた。

テレビのタレント弁護士から首長となった橋下氏は約8年にわたって大阪を席巻し、敗れたとはいえ、大阪市解体の住民投票にまで突き進んだ。そこには、強権的な行政運営や政治手法を批判・検証することなく、高い人気を後押しし、最後には報道への介入まで許した在阪マスメディアとの「共犯」関係があった。そんな問題意識で、橋下氏とメディアの関係を検証した本である。

今春のコロナ禍の中、その取材当時の光景がよみがえった。大阪府の吉村洋文知事を称賛し、「将来の首相」とまで持ち上げるメディア、とりわけ在阪テレビ局のはしゃぎぶりである。

当初は松井一郎市長とともに「花見もできる」と楽観していた吉村氏だが、3月下旬、「三連休中の大阪・兵庫間の往来自粛要請」を突然、テレビの生放送で発表した。専門家の資料にあった「今後3週間、大阪府・兵庫県内外の往来自粛」を矮小化した「政治判断」、つまり科学的根拠のない発言だったが、インパクトは大きく、これを境にテレビ出演が急増してゆく。

3月は8回、4月は23回、5月は31回。これらは府の記録に残る「公務」だが、それ以外にも右派言論人が集うネット番組への出演や、記者会見を生中継する民放局もあった。

大阪府HP「知事の日程」より。5月のこの週は、収録含めて11番組に上った

こうした番組の中では、休業要請に応じないパチンコ店の公表、経済活動再開の指針「大阪モデル」、独自のワクチン開発といった矢継ぎ早のコロナ対策が評価され、吉村氏は「トップダウンで果断を下す若き知事」「政府に物言う力強いリーダー」というイメージを確立していった。

その結果、コロナ対策で最も名を挙げた知事となり、国政レベルでも日本維新の会の支持率が跳ね上がった。終息が見通せない不安と、アベノマスクに象徴される政府の失策で、人びとが「強いリーダー」を求めた側面もあったのだろう。

政策を検証して、報じる視点が必要

だが、「矢継ぎ早」は裏返せば「拙速」であり、「トップダウン」は「現場軽視」となる。府下の市町村や医療・保健機関では、さまざまな混乱と矛盾が生じているが、その点にテレビはほとんど触れない。知事のキャラクターや政府・他県との対立を強調するばかりで、政策の実際の効果や影響、妥当性を検証する視点が欠けているのだ。かつて橋下氏を後押しした報道に、驚くほど似ている。

批判的な検証報道を継続的に行っている毎日新聞の記事

とはいえ、こうした状況を疑問視する報道機関もないわけではない。例えば、毎日新聞は、松井市長が市民から集めた大量の雨合羽が庁内に放置され、火災予防条例違反であること、同市の10万円給付が著しく遅いことなどを指摘する批判的検証を継続的に行っている。また、大阪モデルの恣意的な緩和をはじめ、経済活動を優先する姿勢が第二波の広がりを招いたと指摘する報道も増えてきた。

イメージを肥大させるのも報道なら、実態との乖離を明らかにするのも報道だ。やはり、これは徹頭徹尾メディアの問題なのだとあらためて感じている。

―次号につづく


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