第1回 フィニッシュすれば皆勝者

西内洋行のトライアスロンのススメ

第1回 フィニッシュすれば皆勝者

水泳(スイム)、自転車(バイク)、ランを続けて競技するのがトライアスロンという競技。

宮古島大会でのラン。残り42kmを集中して走る

中でも、スイム3.8km、バイク180km、ラン42.195km、総距離226kmを続けて競技するのがアイアンマンという種目です。あまりにも長すぎて、ランニング以外は想像がつかないでしょうが、関西空港の連絡橋で例えるなら、泉佐野から関西空港へ渡るまでが大体そのスイム3.8kmの距離。自転車で180km だと、大阪から名古屋までの距離です。それから42.195kmのフルマラソンですから、最初は果てしない距離に感じられるかと思います。何回も出ている選手からすると、自転車まで終われば「ああ、あとはフルマラソンで終わりか」と距離の長さに慣れていきます。

プロのトップ選手は、アイアンマンの226kmを7時間台から8時間台、一般の選手の制限時間は最長で17時間。アイアンマンは18歳から参加でき、何と80歳以上の方まで出場、完走を果たしている人もいます。

アイアンマンでのスイムスタートシーン。世界から予選会を突破した1800人がスタートする

最後まで完走をした人が、アイアンマンの称号を与えられます。海外でのレースは、フィニッシュ後に歩いていると、「お前、あの距離を完走できたのか?すごいな!」と一般の人から賞賛されます。競技には総合順位、年代別順位はありますが、自分との戦いという側面が強いので、己と長時間戦って勝ち抜き、フィニッシュを超えた人が皆勝者です。観客からも、やっている本人からしても、他の競技にはない魅力がそこにあるのではないでしょうか。

鉄人レースのイメージが強いトライアスロン、近年ではよりハードルを低くするため、キッズから参加できる競技に変化してきています。キッズの距離は、スイム50m、バイク2km、ラン500mなどの短い距離もあり、私が出場した2000年のシドニーオリンピックから正式種目として採用されてから、一般の大人が参加できるオリンピックディスタンスという総合51.5km(スイム1.5km、バイク40km、ラン10km)という距離のレースがスタンダードとなりました。大会数もかなり多くなり、日本では200レースも開催され、よりチャレンジしやすくなってきています。

宮古島大会でのバイク。長距離の走行なので、ペース配分や補給が大事になる

さて、そのトライアスロン、元からスポーツをガンガンやっていた人が多いわけでもなく、意外にもあまりスポーツをやっていなかった人が、大人になってから始めたという場合が多いです。柔道で言えば、「柔能く剛を制す」といったところでしょうか。若い頃に筋肉で固めても、長距離になるとパワーの出る重い筋肉を身につけすぎるより、いかに長い時間、省エネで動き続けられるようになるかがポイントになってきます。

トレーニングも必要ですが、ある程度経験をしていって、自分との対話をしてセルフコントロールできてくると、長時間走るのもさほど苦ではなくなってきます。過去にやっていたスポーツはあまり問わずに、筋持久力、心肺機能を鍛え、そして脳の持久力、使い方がうまくなってくると、よりトライアスロンを楽しむことができてくると言えるでしょう。 このトライアスロンのススメは全3回連載を予定しています。次回も引き続きトライアスロンの魅力をお伝えしていきたいと思います。


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