〈第13回〉街場から考える都構想

この『大阪保険医新聞』の5月合併号まで「うま安、大阪名物」の連載を書かせていただいていたが、今号から「街場から考える都構想」という連載を引き受けることとなった。

880円(税込)。2019年6月1日 140B出版

わたしはこの「うま安、大阪名物」の連載のように、普段はもっぱら街場のうまいもん屋の話題や、都市文化やまちづくりなどを取材して書いたり編集してきたが、吉富有治さんによる『緊急検証 大阪市がなくなる』(写真左)を編集した。ちょうど一年前、昨年6月のことだ。年が明けてしばらくすると、新型コロナウイルス感染拡大で、街場はまったく様相が変わってしまった。

この文章を書くにあたって、昨年4月に大阪府知事・市長の「クロス選」が行われ維新が圧勝したことを思い出そう。たった1年前のことだ。これは公職選挙法で「任期の特例規定」が定められている「出直し選」とは違う。このクロス選の悪質なところは、その法の目をかいくぐるために、府知事と市長を同時に辞任し「入れ替えで」立候補した点にある。

そもそも任期を延ばすことを目的化して「出直し選」を行うことを禁じる法に対しての「脱法行為」にほかならないのだ。

わたしはこの異様な選挙で吉村府知事、松井市長が誕生し、2015年に住民投票で否決された「都構想」を再び蒸し返すことに大きな疑問を感じ、この『大阪市がなくなる』を編集した。その住民投票否決で、橋下市長は「政治家は終了」と引退を表明したが、「勝つまでジャンケン」のように、また住民投票に持ち込んで、「維新の一丁目一番地」をやろうとする政治的目標はなんなのか。

1540円(税込)。2015年11月13日 140B出版

巻末には2008年1月に橋下府知事が誕生し、そこから10年を俯瞰した「大阪の政治と維新と都構想年表」と、15年の日本ジャーナリスト会議賞を受賞した『誰が「橋下徹」をつくったか―大阪都構想とメディアの迷走』(写真右)の著者・松本創さんにおいでいただいた対談も収録した。「大阪維新と大阪の10年」を問い直したいと思ったからだ。

大阪市という政令市を廃止して、これらの権限と財源を大阪府が吸い上げること。大阪府がそれらの権限と財源を使って、大型の公共事業に投資すること。それによって大阪には国内外から企業が集まってきて地域経済が成長する。

それがカジノであり万博である。御堂筋の銀杏に電飾を施したり、大阪城公園にモトクロスのイベントを呼んできたり、フードパークをつくったりしてきた。その成長戦略は大阪の街にかつてあったものをどんどん民間資本の商業施設に売り飛ばすことに等しい。

10万円給付20政令市で最下位の大阪市

吉村府知事はしばしば自身を「政治家」と称する通り、行政は著しく損なわれている。このコロナ禍では徹頭徹尾、行政が住民の生活を左右する。仕事がなくなったり店が潰れたり、そのような現在進行形で深く傷ついている「地元」が大阪である。

健康で文化的で、病気になれば医療を受けられ、働けない年齢になれば福祉に頼れる。それらは安心して毎日ご飯を食べたりできるのと同様であり、そういう「実生活」05に向き合うのが行政ではないか。メディア受けの「大阪モデル」と20政令市で最下位の異常な遅れの10万円給付(下写真)。そのずれに愕然とする。

10万円給付は大都市で遅れているとの記事(6月28日「朝日新聞」より)

筆者プロフィール

編集者/著述家 こう 弘毅ひろき

1958年岸和田市生まれ。『MeetsRegional』誌創刊に携わり12年編集長を務める。その後、編集のみならず街や食の著作を連発。昨年12月に『神戸と洋食』(神戸新聞総合出版センター)を出版。他に『「うまいもん屋」からの大阪論』(NHK出版)『いっとかなあかん店大阪』(140B)など。『大阪保険医新聞』2020年新春特集号から同年5月合併号まで「うま安、大阪名物」全5回を連載。


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