<第二回>「職人の技」

うま安、大阪名物 江 弘毅<第二回>

店主の辻昇さんと奥さんが切り回す「布施風月」に食べに行くと、「やっぱりここのお好み焼きはうまいなあ、違うなあ」という実感がする。それはずばり「腕が違う」ということだ。お好み焼きにしろ、うどんにしろ、串カツにしろ「職人が調理する」ものだ。

「シェフ」あるいは「料理人」というより「職人」。その職人の範疇の中に鮨屋や割烹の「板前」があるのだろうが、料理上手なおばちゃんが家計を補うために、家の軒先で店をはじめてそれが結構人気、というのは大阪の下町でよく聞いた話。今ではお好み焼き店はチェーン店化していて、若いニイちゃんがテコをカチャカチャ鳴らしてお好み焼きを焼いている姿の方が多くなってきた。

前回の最後に書いたが、それらがどうしても「技術不足」となかなかキッツいことを言う「布施風月」のご夫婦のお好み焼き。

ここのお好み焼きは、客席の鉄板で焼くスタイルで、一切合切ご夫婦の手によって焼いてくれるのがいい。

特徴のひとつが260〜280℃の高温の鉄板。これで焼きあげて、火を止めて食べるのだが「最後まで続けて焼いている状態」がキープされる。そこがうまいのだ。焼けたものを客席の鉄板に移すやり方だと、一度持ち上げるからどうしても温度が下がる。それを店主の辻さんは「お好みが死んでしまう」と表現する。

美しく盛られた材料が、客の目の前で焼き上げられていく。つなぎがほとんどなくキャベツが多いことがわかる

それにしても一連の「焼き」作業は見事だ。まず大きな片手金属ボウルに入れられた(実に美しい)、生地、キャベツ、卵、豚やイカなどの具といった一切の材料を客の前でかき混ぜながら熱い鉄板に「置いていく」という手つき。生地が極端に少なくほとんどキャベツといった具合がわかる。大きな切片の花カツオを上からどかっと散らすのは、生地が少ない分それでつなぎの役目をしているのだ。

カツオがつなぎの役目果たしている。生地が薄いため、割れずにひっくり返すのは至難の技で、職人の腕が光る

6分。砂時計が用意されて正確である。下面が焼けるとひっくり返すのだが、これは粉がごく少ないのでシロウトがやると割れてしまうな。そして同様に6分。加えて焼けるまで一切テコで触ったり押さえつけたりしないのに「なるほどな」と思う。レベルの高い職人技である。

仕上げにソースとマヨネーズで出来上がり。その味は間違いなしの絶品である

絶妙の焦げ目がついた出来上がりにソース(辛口と甘口があって訊いてくれる)とマヨネーズをかけてくれる。テコで切ってそのまま口に入れると、ぶ厚すぎて熱すぎて…となるので、見た目は悪いが切ったのを取り皿にのせて、箸でくずすようにして食べるのがうまい。誰が言ったか「ホットサラダ」。まぎれもない大阪のお好み焼きだが、このキャベツの量と焼かれ具合(これが「風月」お好み焼きの系統である)はまさにその通りだ。


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