最終回 カジノを超えて

カジノ誘致に潜むワナ 最終回 阪南大学流通学部教授 桜田照雄

先だって「日経統合型リゾート・フォーラム」が大阪で開催されました。3つのカジノ事業者をはじめ、国会議員、関経連幹部、学識経験者、大阪府知事、大阪市長、IR推進局幹部など、夢洲万博カジノ計画にかかわる「オールスターキャスト」からなる一大カジノ・プロモーション・イベントでした。

ウィン・リゾーツが今年6月にオープンさせたボストンの都市型カジノをプレゼンするなかで、同カジノが「化学工場跡地なので有害物質の除去を行って建設された」ことなど、夢洲開発への懸念を払拭するメッセージが、随所にみられました。極めて緻密に組み立てられたプログラムだとの感想をもちました。

しかしながら、おそらくは推進本部(特定複合観光施設区域整備推進本部)からだと思われる問題提起がありました。「送客機能の充実」という論点です。「我が国において国際競争力の高い魅力ある滞在型観光を実現する」のが法の目的であり、送客機能は、「我が国における各地域の観光の魅力に関する情報を適切に提供し、併せて各地域への観光旅行に必要な運送、宿泊その他のサービスの手配を一元的に行うことにより、国内における観光旅行の促進に資する施設」(特定複合観光施設区域整備法第2条の4)と定められています。

「( インバウンドを誘客できる)国際競争力」と「(およそカジノには似つかわしくない)滞在型観光の実現」が「統合型リゾート」を表すキーワードなのです。カジノ来訪者は6000円の入場料を払って賭博を楽しもうというギャンブラーなのであって、彼らが「統合型リゾート」に「滞在」するのは賭博のためなのです。こういう本質を「統合型リゾート」は抱えているので、カジノ事業者の計画には、MICE (集客のための会議場や展示場など)はあっても、観光行政が期待する「国内における観光旅行の促進に資する施設(送客機能)」が欠けています。その結果、法にいう「滞在型観光の実現」はおぼつかない。けだし、当然でしょう。「統合型リゾート」とはカジノ(賭博場)に他ならないからです。

カジノ誘致をめぐっては、「カジノがなくてもMICEはやれるではないか」との根強い反対論があります。実は、この「送客機能」は法律でも手当てが済んでいます。「観光地域づくり法人(DMO)」の創設を促した「観光整備法(平成20年)」がそれです。「国際競争力の高い魅力ある観光地域づくり」を目的に掲げたこの法律があるなかでの「統合型リゾート」。カジノでは「滞在型観光の実現」は無理なのではありませんか?

この「送客機能を担う施設」はMICEの来訪者と矛盾しないのでしょうか? 出張客は会社のおカネで来るのですから、自費での旅行は考えにくい。しかも、「統合型リゾート」への来訪ニーズと対象地域の観光資源とのマッチングが失敗すれば「統合型リゾート」は、依存症にさいなまれるギャンブラーと売春婦がたむろするエリアに成り下がってしまいます。さあ、どうするのでしょうか?

今年の8月に開催された日本経済新聞社主催の「統合型リゾートフォーラム」プログラム

基調講演

萩生田 光一(衆議院議員)

パネルセッション1 「関西経済の持続的成長~国際集客都市への戦略とは」

井手 憲文(日本観光・IR 事業研究機構理事、元観光庁長官)/大﨑 洋(吉本興業会長)/ 小坂 肇(りそな銀行副社長)/モデレーター・橋爪 紳也(大阪府立大学)

講演1

ジェフリー・スチュアート・デイヴィス(メルコリゾーツ&エンターテインメント)

パネルセッション2 「ギャンブル等依存症対策の本質とは~日本型IR におけるResponsible Gaming (責任あるゲーミング) の必要性」

中谷 元(衆議院議員)/西村 直之(日本SRG 協議会〔JSRG〕代表理事、精神科医)/谷岡 一郎(大阪商業大学学長)/モデレーター・丸田 健太郎(KPMG あずさ監査法人)

特別パネルセッション「大阪IR が目指すべき姿とは~行政課題と民間への期待」

吉村 洋文(大阪府知事)/松井 一郎(大阪市長)/モデレーター・堀田 昇吾(日本経済新聞社)

講演2

ブライアン・サンドバル(MGM リゾーツ)

パネルセッション3 「国際観光都市OSAKA ~ IR が刺激するインバウンド・MICE 需要」

溝畑 宏(大阪観光局理事長、元観光庁長官、大阪府市都市魅力戦略推進会議会長、大阪府・大阪市IR 推進会議座長、大阪・関西スポーツツーリズム& MICE 推進協議会会長)/蔭山 秀一(ロイヤルホテル社長・元三井住友銀行副会長)/太田 正隆(JTB 総合研究所)/モデレーター・品田 英雄(日経BP 総研)

パネルセッション4 「夢洲開発と都市の未来」

角 和夫(阪急阪神ホールディングス会長)/鈴木 基久(ALSOK 常務)/モデレーター・古嶋 雅史(アクセンチュア)

講演3

クリス・ゴードン(ウィン・リゾーツ・デベロップメント 社長)

特別セッション「大阪IR と関西の未来図」

前原 誠司(衆議院議員)/遠山 清彦(衆議院議員)/モデレーター・田中 陽(日経新聞)

クロージングセッション「IR と関西新時代」

竹中 平蔵(東洋大学教授、慶応義塾大学名誉教授)

情報交換会

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