カジノの経済効果

カジノ誘致に潜むワナ 第4回目 阪南大学流通学部教授 桜田照雄

賭博であるがゆえに必ず儲かるカジノを中心に集客施設を整備して、観光需要を呼び起こし、賭博客や観光客が「落とすお金」で地域振興を企てよう。こういうアイデアで「統合型リゾート(IR)」構想が誕生しました。

民間賭博を日本の歴史上初めて公認するわけですから、さまざまな仕掛けが必要です。

国や自治体が音頭をとって賭博業者を誘致し、法制度上の制約をクリアーする。経済効果なるものを宣伝し、住民合意を形成する。賭博は必然的に依存症を生み出すので、依存症対策を手がける。こうしたことが仕掛けられました。

大阪府が2015年に計算した経済効果額を表に示しました。2024年にカジノを早期開業させ、2030年にさらなる拡張を図るとの計画です。前者をパターン1、後者をパターン2としています。経済効果は生産増加額と雇用創出数から構成されており、生産増加額は産業連関表(平成20年ベース)から計算されます。カジノやホテル、Meeting(会議・研修・セミナー)、Incentive tour ( 報奨・招待旅行)、Convention または、Conference(大会・学会・国際会議)、Exhibition (展示会)に関連する諸施設(MICE)を建設・運営することによって、いかほどの波及効果が得られるかが、産業連関表からたちどころに計算されます。

例えば、総工費100億円の建物なら、建築資材の鉄がいくら、コンクリートがいくら必要でその価格はこれだけで、建物の建設、鉄の生産、コンクリートの生産、建築資材の運搬にかかったお金を「波及効果額(1次効果、2次効果)」として示すことができます。また、これらの効果額をそれぞれの分野での平均賃金・平均労働時間で割り引けば、雇用創出数も産出できます。それらの関係を図に示しておきました。

図 経済効果と税収効果のイメージ

大阪府(2015年) は、パターン1での経済効果を開発事業で5600億円、事業運営で3000億円とはじきだしました。この開発事業には、建設用地となる夢洲が人工島ですので、アクセス道路や鉄道の建設工費やカジノとMICE諸施設の建設工費が主なものとなります。もちろん建設に従事する労働者の生活費なども1次効果ないし2次効果として、この金額に算入されています。

雇用創出効果は、事業内容や規模から算出されるのではなく、産業連関表の生産増加額から導きだされたものであることに注意が必要です。この点でいえば、税収効果も同様で、カジノ入場料と「カジノ税」、すなわち、カジノの粗利益(ギャンブラーの賭金×カジノの粗利益率)の30%相当額の1/2(国との折半なので)を税収効果としています。つまり、法人税や法人住民税、法人事業税、さらには消費税が免除されることが前提されていることにも注意が必要です。

推進派も認めておられるように、ギャンブラーの1~2%は「確実に依存症になります」。1000万人規模の集客を見込んでいるカジノ。ゼネコンや賭博業者が儲ける一方、毎年10万~20万人もの依存症罹患者を生み出しては割に合うビジネスではありません。


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