勝った者も「ギャンブル依存症」


カジノ誘致に潜むワナ 第1回目 阪南大学流通学部教授 桜田照雄

大阪府・大阪市の「IR推進室」のビジネス・プランによれば、IR施設全体で4800億円。そのうちカジノで3800億円の「利益」が目論まれています。さらに、3800億円のうち外国人ギャンブラーからは2200億円を、日本人からは1600億円を「頂戴する」といいます。

パチンコの売上高は20兆円なので、3800億円という数字を聞かれた方は、「カジノってたいしたことないやん」と思われるかも知れません。話を日本人に限って進めると、「1600億円をカジノが儲けたということは、1600億円を日本人ギャンブラーが負けた」ということだと考える方は、実はけっこうおられるようです(図1)。

図1)1600 億円の利益についての間違った解釈

ここに第一の誤解ポイントがあります。カジノが1600億円の「利益」をあげるには、どれだけの勝負(金額) が必要なのかということが大事なのです。中央競馬では馬券(勝ち馬投票券)売上の25%が「経費」として控除されて、残りの75%が配当に回されます。ですから、「中央競馬会は有馬記念で75億円の収入を得た」というケースだと、75億円を25%(0.25)で割った300億円が売上の総額となります。300億円× 25%= 75億円ですね。

ベネチアン・マカオというカジノがあります。ラスベガス・サンズ社が経営する世界最大規模のカジノです。ラスベガス・サンズ社はニューヨーク証券市場に上場する企業ですので、日本でいう有価証券報告書をアメリカの証券取引委員会に提出し、公表しています(Form10ーk)。そこでこの公認会計士による監査済財務諸表から該当する数値を拾い集めて、「テラ銭」を計算してみますと、6.3%という結果が得られました。

一般客とVIP客のバカラ賭博やスロットマシンでの賭博など、カジノ全体の賭博を通じて394億9700万ドル(4兆3446億7000万円=1ドルを110円で換算)が賭博に投じられ、カジノ側は24億9500万ドル(2744億5000万円=同じ)の「利益」を獲得しています。その「利益率」が6.3%(=24 億9500万ドル/394億9700万ドル)です。

大阪府・大阪市が想定している夢洲カジノで日本人客から1600億円の「利益」をカジノ側が得るには、2兆5400億円を賭博に投じさせなければなりません。その差額である2兆3800億円はというと、これが「賭博に勝った客の取り分」(「泡銭( あぶくぜに)」)に他なりません。

大阪府・大阪市は「カジノの儲け=(客の賭金総額)―(顧客への払戻金)」といって、1600億円が客の「負けた金」だと認識しているようですが、とんでもないことです。客が2人だけ、1対1 の勝負を6.3%のショバ代=テラ銭をカジノに払ってディーラーを雇い、2兆5400億円ずつ賭けて勝負をしたとします。一方は2兆5400億円負けました。勝った客は2兆5400億円の「利益」を受け取りましたが、1600億円のテラ銭をカジノに払うので、この勝負の「利益」は2兆3800億円になります(図2)。

図2)カジノビジネスの仕組み

106億円の横領事件で服役した大王製紙の社長は、4時間で150万円が22億円に化けたといいます。負けた者だけでなく勝った者も不幸にたたき込むのがカジノなのです。

さくらだ・てるお

1958年大阪生まれ。大阪市立大学商学部、京都大学大学院経済学研究科博士課程、日本学術復興会特別研究員を経て、現職。

専門は経営財務論。主な著書に『銀行ディスクロージャー』(法律文化社、1995年)、『さくら銀行・三和銀行( 日本のビッグ・ビジネス)』(大月書店、1997年)、『取り戻した9億円― 相互信用金庫出資金返還起訴の記録』(文理閣、2013年)。

カジノ誘致をテーマに様々なところで講演。

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