(3)「デフレスパイラル」脱却には法人税と所得税の引き上げを

―藤井先生は第2次安倍政権発足と同時に内閣官房参与に就任されました。内閣官房参与当時に、安倍首相は今年の10%消費増税を実行することを法律で決めましたが、その時点から今回の増税は高い確率で行われることが決まっていたのでしょうか。

私は内閣官房参与だったときから今も一貫して「十分なデフレ脱却が出来たら増税も可能である」と述べてきました。

そもそも、日本がデフレに陥った原因は1997年に消費税が3%から5%へ引き上げられたことにあります。97年を境に名目GDPは縮小していきました。また、政府の税収においても、97年に一時的に税収が増加したもののその後は下落が続いています(図3)。

図3 政府の総税収の推移
藤井聡著『「10%消費税」が日本経済を破壊する』より

 

「デフレ経済下」での増税は深刻

こうして日本は「デフレ経済」へと突入し、今もデフレ状況から脱却できない状態にあります。消費税は 「消費」を一気に冷え込ませる巨大なパワーを持っています。消費増税はインフレ下では必ずしも深刻な経済被害をもたらさないですが、デフレ下では深刻な経済被害をもたらします。

安倍首相が2014年当時に10%消費増税を2019年の10月に行うと宣言した時点では、少なからず 「デフレ脱却」の可能性があり、それを前提とした10%増税を予定しました。

しかし、現時点でデフレ脱却ができる見込みが無いなかで今年10月の10%への 消費増税が日本経済に激しいダメージをもたらすことは明らかです。増税の根拠が崩れてしまっているので増税延期は当然のことであると考えます。

 

内需拡大と景気回復が求められる

―日本がデフレから脱却するためには、どうすれば良いのでしょうか。

図4 消費増税がデフレを導くメカニズム
藤井聡著『「10%消費税」が日本経済を破壊する』より

消費税は国民の消費活動に大きく歯止めをかけてしまいます。その影響を受けて企業収益も減って各世帯の所得もまた減少します。これがいわゆる「デフレスパイラル」(図4)となります。

そこから脱却するためにはまず内需を拡大し、景気を回復させることが早急に求められます。そうすることによって一人ひとりの所得が上がり、所得税収が増えます。そして企業が儲かれば法人税も上がります。この2つが上がれば、デフレから脱却できるのです。

そもそも、税収を上げるためであれば消費税が導入されてから今まで減税されてきた法人税と所得税を引き上げる、あるいは元の税率まで戻すだけで良い訳で あります。

(4)に続く…

大阪保険医新聞 2019年3月15日号(4・5面)に掲載


藤井 聡 氏
京都大学大学院
工学研究科教授

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