(2)8%増税後の日本「デフレ深刻化」 国民の消費水準 年間34万円減少

―現状の日本国民の消費状況はいかがでしょうか。

日本は2014年に8%に引き上げられた消費増税後の消費の落ち込みを未だに引きずっている状態にあり、国民の消費は年々冷え込んでいるのが現状です。

8%への消費増税の直前までの国民各世帯の年間消費は369万円だったのに対し、8%増税以降、年々消費は縮小していっており、現在では一世帯あたり年間で34万円も消費を削っているのが現状です(図1)。

図1 消費増税前後の、各世帯の消費支出額の推移
*総務省統計「一世帯一カ月間の支出(二人以上の世帯)」の各年の「1月」の名目消費支出総額を、同月の消費者物価指数(2017年1月基準)を用いて求めた実質値に基づいて12カ月分の消費に調整した数値。
藤井聡著『「10%消費税」が日本経済を破壊する』より

消費水準を保つうえで必要なものが十分な「世帯所得」であり、その大半は給与が占めています。サラリーマンの給与の水準は2010年以降少しずつ下落し、消費税が増税された2014年には前年度と比べ3%以上も減少しました。その後、現在に至るまでも全く回復していないことがグラフから分かります(図2)。

図2 決まって支給する給与(実質値)
*事業規模5人以上の企業の給与、2010年平均を100として基準化
藤井聡著『「10%消費税」が日本経済を破壊する』より

国民の実質賃金は8%消費増税を皮切りに下落を続けており、消費も冷え込んでいるのが残念ながら今の日本の現状です。日本のデフレは深刻化しているといわざるを得ません。

 

「リーマンショック」級の経済的影響

―安倍政権は「リーマンショック級のことが起こらないかぎり増税は実施する」としていますが〝リーマンショック級〟とは例えばどういったものでしょうか。

考えられるものは3つあります。いわゆるリーマンショックと言われる大型の経済的ショック、そしてもう1つが大災害です。次に考えられるのが経済の冷え込みの〝合わせ技〟です。

〝合わせ技〟でリーマンショック級になる恐れがあるものとして、中国のデフレからくる経済的な影響や米中経済摩擦による関税上昇、ブレグジット(英EU 離脱)による世界的影響など、「経済下振れ」の可能性はいくつかあります。

そのうえ、現在の日本はとりわけ、賃金・物価が大きく下落しているなか、低迷圧力がかかっており、経済は下向きとなっているのが実態です。

リーマンショック時、GDPはマイナス3.6%になりました。次の5月頃に出る指標で、GDPが想定していた成長率に比べどの程度減っているかを土台にし、0.5~1%下落するという指標が出たら、そこに他の「経済下振れ」圧力等が重なれば、大いにリーマンショック級に成り得る訳です。おおよその方向性が決まるのは予算が成立してGDPの指標がでる5月頃だと予想しています。

たとえ申し上げたような経済ショックが起こらなくても「消費増税」そのものがリーマンショック級の経済的影響をもたらします。

 

働き方改革と10%消費増税

―今年の4月から働き方改革関連法が施行されます。消費増税への影響はありますか。

働き方改革によって、労働者の残業が減ります。過重労働が深刻な問題となっているなか、残業が減ることは良いことではあります。しかし、労働者の賃金は依然低いままですので、残業代で生計が保てている国民が多いという実態は解消されないまま施行される訳です。

例えば大和総研は、今議論されている働き方改革が進められれば、労働者の所得が8.5兆円縮減されるであろうと予測しています。これだけの所得が圧縮されれば世帯消費が大きく落ち込むことは予想できます。

これに消費税増税が加わると消費の落ち込みに拍車をかけ、国民のさらなる貧困化は避けられません。

 

「一時的」施策では回避できない

そこで、安倍首相は消費増税による家計負担は6.3兆円増となることに対して、それを上回る6.6兆円規模の対策を行うとしています。その対策として打ち出されているのが「幼児教育無償化」や「ポイント還元施策」などです。

この対策についてですが、結論から言わせていただくと、このような施策では経済的ショックは回避できません。

何故なら、幼児教育無償化やポイント還元等は各家計に「支給」するものであり、必ずしもこの支給額が消費にまわるとは限りません。家庭によっては支給された分を貯金にまわす世帯もいるでしょう。そうなれば、政府が予算をまわした分の消費収益は見込めないことになります。

一時的な対策は、消費増税の負担や影響をあくまでも先延ばしするだけのものであり、対策の期間が終了すれば同じ結果が待っていることになります。これだけでも消費増税への対策が不十分なことが伺えます。

(3)に続く…

大阪保険医新聞 2019年3月15日号(4・5面)に掲載


藤井 聡 氏
京都大学大学院
工学研究科教授

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