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- 「都構想」!?どこがウソ!?市解体の実態を探る
- 〈第6回〉「新型コロナ」の影響大 住民投票は延期すべき
〈第6回〉「新型コロナ」の影響大 住民投票は延期すべき
- 2020/4/15
- 「都構想」!?どこがウソ!?市解体の実態を探る
フリージャーナリスト 吉富 有治
私が言うところの「トコーソー」、すなわち大阪市を廃止して特別区を設置する構想は、その是非を問う住民投票が今年11月1日に予定されている。
もし住民投票が行われると、前回と違って今回は賛成多数になるのではないかと予想している。大阪市内での根強い維新人気から見て、おそらく賛成票を投じる有権者が多いだろうと思うからだ。
ただし、その住民投票の実施も怪しくなってきた。大阪維新の会代表で大阪市の松井一郎市長は4 月1 日、新型コロナウイルスの感染拡大が秋まで続くようなら住民投票の延期もやむなしとの考えを示した。その判断は遅くとも今年夏には下すという。しかし松井市長とは別の意味で私は住民投票の延期を訴えたい。
住民の経済状況考えると特別区設置今でない
もし今年秋までに新型コロナウイルスの騒動が終息すれば疫学的に見ても多くの有権者が投票所へ足を運ぶことに問題はないだろう。すでに感染が終息しているのならば、さらに爆発的な感染を引き起こす可能性は低いと思われるからだ。ただし、感染の問題は低くても経済的には問題あり、である。
仮に住民投票が実施され賛成多数になった場合だが、その後の大阪府と大阪市は事務の移管と特別区移行の業務で両役所をあげて膨大な仕事に追われることになる。そこにコロナ騒動の後始末が加わるとなれば事務作業はさらに膨れ上がり、下手すると過労死する職員が出てくるかもしれない。
さらに深刻なのはコストの問題だ。特別区を設置し、なおかつ特別区で従来どおりの行政サービスを維持するには数千億円単位の公費が必要になってくる。ところが、今回のコロナ騒動で大阪府と大阪市の財布に余裕がなくなってくるのは間違いない。感染が収まっても経済的なダメージは「その後」にこそあるからだ。
外国人観光客の減少や外出の自粛などで売り上げが大幅に減った企業や小売店は少なくない。これからは倒産や雇用調整する企業も増えてくるだろうし、最悪の場合、不況に突入して府・市の税収は減る。逆に景気対策などで歳出は増え、今後の財政運営に軌道修正が求められる。
「コロナ不況」影響を加味した協定書見直しを
11月1日に実施予定の住民投票で是非が問われるのは「特別区設置協定書」(協定書)だ。そもそもこの協定書は新型コロナウイルスが国内で拡大する前の大阪府と大阪市の財政状況を前提にシミュレートしたもので、税収が増えても大きく減ることはないだろうという予測に沿ったものだ。だが、〝コロナ不況〟の影響を考えるのなら特別区の財政予測を辛めに修正した協定書にしなければならない。
コロナ以前の甘い予測に立った協定書の是非を11月の段階で問うのはリスクがありすぎ、もし賛成多数になった場合、協定書通りに特別区の住民サービスが維持されるかは大いに疑問である。
遅かれ早かれ住民投票は実施されるだろう。ただし、やるならやるで正確な予測が記された協定書に基づいたものでないと必ず将来にトラブルのタネを残す。しかも、そのトラブルは一過性のものではない。特別区の住人がずっと背負っていかなければならない厄介なものなのだ。
―次号から筆者を交代します。