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カジノが生み出す依存症
- 2019/6/5
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カジノ誘致に潜むワナ 第2回目 阪南大学流通学部教授 桜田照雄
大阪府・市のIR推進局の計画によれば、夢洲に建設されるカジノには年間で400万人を誘客するといいます。今回はこの「400万人」という数字を用いて、夢洲カジノ計画を暴こうと思います。
「ギャンブル依存症患者」を更に増やすカジノ計画
まず、推進派のみなさんも認めていることですが、カジノが開業すれば、100人のうち1人か2人の依存症に陥る人が表れるといいます。400万人の1~2%といえば、4万人から8万人という規模になります。
300万人とも、500万人ともいわれる「依存症に悩む」人々がすでに日本には存在しています。このうえ罹患者を増やそうというのですから「何をか言わんや」の気分です。パチンコに夢中になって、幼な子を車中に放置し、あげくの果てに命を奪ってしまう。痛ましい事故の報道は、後を絶ちません。
依存症に苦しむのは患者本人だけではない
アメリカのGoodwinという依存症研究者が明らかにした論文によれば、「1人の問題ギャンブラーには6人に、1人の中程度のリスクを抱えたギャンブラーには3人に、1人の軽度のリスクを抱えたギャンブラーはもう1人に、依存症にともなう悪影響を及ぼす」といいます。4万人から8万人の新たな依存症罹患者の存在を考えれば、最大で50万人近くの「ギャンブル依存症に悩む人々」が新たに生まれるという計算になります。つまるところ、「ギャンブル依存症に悩む人々のうち、大多数の人々は、ギャンブルには縁のない人」だということになるのではありませんか。
長年にわたって依存症問題に取り組んでこられた大谷大学(京都)の滝口直子先生は、こういう分析をしておられます。家族からすれば、「土下座をして泣いて二度とギャンブルには手をださないと誓ったんだ。もう懲りただろう」とか、「ヤミ金から脅されてあれだけ怖い目にあったんだから、もうやらないだろう」とか、「あんなかわいい子どもたちのことを、ちょっとは考えてみてください」とか、こういう家族の願いはまったく無駄に終わってしまうのがギャンブラーの行動なのだそうです。
「ギャンブルは手っとり早くカネを稼げる。アルバイトなら時給950円だ。ものの30分で1万円稼げた」「家族がうるさいから家にはいられない。だからパチンコにいくのだ」。これがギャンブラーの言い分なのです。
カジノ事業者が狙う巨額のパチンコマネー
パチンコは「健全な娯楽」と業界関係者はいいますが、形を変えたギャンブルにほかなりません。1000万人のギャンブラーが1人で年間190万円をつぎ込み、業界は19兆円という途方も無い売上高を誇っています。カジノ事業者からすれば、この19兆円が〝垂涎の的〟なのでしょう。400万人の半数200万人をパチンコからカジノに誘客すれば、3兆8000億円の売上が期待できます。この金額はシンガポール・カジノの4兆円の売上高に匹敵します。1000万人のパチンコ・ギャンブラーから200万人を誘客すれば、5年間で「食いつくして」しまいますが、5年あれば夢洲カジノで計画されている「1兆円の設備投資」は回収できてしまいます。なんともやるせない試算です。