大阪保険医新聞2018年3月5日号 2面より
保険医協会では、年明けから1月末にかけて、府内43市町村に対し4月からの制度内容についてアンケートを行いました。以下に概要をお知らせします(※未回答の豊中市を除く)。
なお、市町村によっては調整中との回答もありましたので、詳細については各市町村の担当窓口にご確認くださいますようお願いします。
Ⅰ.子ども医療費助成制度【86】について
1.対象年齢
①通院では「高校卒まで」=8市町【大阪市・箕面市・能勢町・豊能町・摂津市・寝屋川市・門真市・田尻町】、「中学卒まで」=32市町村、「小学卒まで」=2市町【島本町・高石市】
②入院では「高校卒まで」=8市町【通院と同様】、「中学卒まで」=34市町村、「小学卒まで」=0
※所得制限「あり」は、大阪市・八尾市・豊能町のみ
2.一部自己負担額
全ての自治体が「府の制度と同様」と回答
3対象医療の市町村独自制度
上乗せの「独自制度」をするのは、大阪市と島本町のみ
※大阪市は「精神病床への入院」に対し助成を継続
※島本町は、精神障害者保健福祉手帳所持者は「精神病床への入院」を継続
4入院時食事療養費への独自助成
①「助成なし」=8市町【大阪市・吹田市・箕面市・能勢町・豊能町・島本町・四條畷市・河内長野市】
※吹田市は、3/31までは全額助成
※四條畷市は、3/31までは一部助成(1食360円)
②「一部対象者のみ助成」=2市【高槻市・摂津市】
※高槻市は、健康保険制度上の低所得者(住民税非課税世帯)のみ助成
※摂津市は、減額認定証の交付を受けた者に対し、食事標準負担額を助成(償還払い)
③「全額助成(無料)」=32市町村
Ⅱ.ひとり親家庭医療費助成制度【82】について
1対象者の市町村独自制度
「独自」で対象拡大しているのは、摂津市のみ
※大学等の高等教育機関に在学する22歳までの学生とその保護者も対象(所得制限あり)
2一部自己負担額
全ての自治体が「府の制度と同様」と回答
3対象医療の市町村独自制度
上乗せの「独自制度」をするのは、大阪市と島本町のみ
※大阪市は「精神病床への入院」に対し助成を継続
※島本町は、精神障害者保健福祉手帳所持者は「精神病床への入院」を継続
4入院時食事療養費への独自助成
①「全額助成(無料)」=7市町【大阪市・柏原市・大阪狭山市・羽曳野市・富田林市・河南町・泉大津市】
②「一部対象者のみ助成」=摂津市
※減額認定証の交付を受けた者に対し、食事標準負担額を助成(償還払いで助成)
③「助成なし」=34市町村
※吹田市・池田市・高槻市(非課税世帯のみ)は、3/31までは全額助成
*「子ども医療対象者は子ども医療で助成」との回答は、「助成なし」にカウント
Ⅲ.障がい者医療費助成制度【80】について
1対象者の市町村独自制度
「独自」で対象拡大しているのは、島本町・高石市・忠岡町のみ
※島本町は、精神障害者保健福祉手帳2・3所持者も対象
※高石市は、療育手帳B1・B2所持者(障がいのみ)も対象
※忠岡町は、中度の知的障がいも対象
2一部自己負担額
全ての自治体が「府の制度と同様」と回答
3対象医療の市町村独自制度
上乗せの「独自制度」をするのは、島本町のみ
※島本町は、精神障害者保健福祉手帳所持者は「精神病床への入院」を継続
4入院時食事療養費への独自助成
①「全額助成(無料)」=2市【大阪狭山市・富田林市】
②「一部対象者のみ助成」=4市【大阪市・柏原市・八尾市・羽曳野市】
※大阪市は、身体障がい者手帳をお持ちの障がい程度1・2級の方、療育手帳(認定カード)をお持ちの障がい程度A(重障)の知的障がい者(児)の方、身体障がい者手帳をお持ちの方で、療育手帳の障がい程度がB1(中度)の知的障がい者(児)の方、は全額助成
※柏原市は、20歳未満の者に限り全額助成
※八尾市は、非課税世帯のみ助成
※羽曳野市は、非課税世帯(健康保険制度上の住民税非課税世帯であり「限度額適用・標準負担額減額認定証」の交付を受けている方)のみ、後日窓口で全額償還
③「助成なし」=36市町村
*「子ども医療対象者は子ども医療で助成」との回答は、「助成なし」にカウント
解説 府は福祉医療を削り、万博・IRに手厚く予算配分
「大阪府福祉医療費助成制度」は、各市町村が実施している医療費助成制度への財源補助の制度です。各市町村は大阪府の補助基準を土台に、独自で対象範囲を拡大するなどして医療費助成制度を実施しています。大阪府は今年4月から歴史ある老人医療費助成制度を廃止し、障害・難病患者の医療費助成制度を後退させる内容で制度改定を行います。
その主な内容は、障がい者・難病患者については、調剤薬局でも患者負担を新たに徴収し、月額の負担においても上限額が引き上げられます。
また、今回の見直しでは対象者の絞り込みも行われます。難病患者においては、現行制度利用者の95%が対象外になると言われています。障害・難病・高齢者にとって「生きていく」ために必要な医療が受けられなくなることは、その方の命を脅かすことになります。
大阪府保険医協会では、この問題が発覚した2016年秋に幅広い団体と共に「福祉医療の拡充を求める大阪実行委員会」を立ち上げ、署名や議会要請行動などに取り組んできました。私たちの運動もあり「子ども」・「ひとり親」制度の患者窓口負担は現行維持に押しとどめました。
しかし、制度の中身は不十分なものです。府内では、府の制度に上乗せして子ども医療費助成の対象年齢を高校卒業まで引き上げる自治体が増えていますが〝府の基準〟通り1回500円の窓口負担が必要です。全国では「無料化」が大勢を占めています。大阪府内でも「無料化」は実現できるはずです。
2月16日、大阪府は2018年度予算案を発表しました。前年度当初比で850億円(3.2%)減と全体では緊縮財政をしく一方で、万博やカジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致などには手厚く配分されています。医療費助成制度など、府民のくらしに直結する予算は減らし、カジノ誘致に莫大な費用を費やす松井・維新府政の姿勢は許されるものではありません。
大阪府保険医協会・「福祉医療の拡充を求める大阪実行委員会」では、引き続き「福祉医療費助成制度」の抜本的な拡充を大阪府・自治体に求める活動に取り組んで行きます。