【理事会声明】医療費抑制のためのセルフメディケーション推進に反対
- 2025/11/29
- 声明・提言
“早期発見・早期治療”の世界に誇る日本の医療を守ろう
東京都医師会会長 尾﨑治夫様
報道関係各社御中
日本の保険医療のあり方をめぐって、政府は「骨太の方針2025」に「OTC類似薬の保険給付のあり方の見直し」を明記し、自民・維新の連立政権合意にその方針が引き継がれて厚労省が具体化の議論を行っている。
このように医療用医薬品の保険はずしが進められる中で、東京都医師会会長の尾﨑治夫氏は「セルフケアで健康の自己管理」を実践した上で、「軽い不調は自分で手当てするセルフメディケーション」「OTC医薬品を活用」を推奨している。健康リテラシーの向上や健診などで自身の健康を管理することは重要だが、セルフメディケーション推進には多くの問題が含まれている。
まず「軽い不調」と自己判断して市販薬で済ませた場合、受診の機会を失って不調の原因である疾患の早期発見・早期治療ができなくなり、重症化して医療費はかえって増大する恐れがある。また、症状だけで市販薬の種類を選択し、服薬する量も自己判断となれば、薬による健康被害のリスクが高くなる。実際に、当会が2025年4月に実施した会員医療機関調査では、「OTC薬(市販薬)を服用し、副作用や重症化するなどして来院した患者さんがいたか」との問いには「いる」との回答が37%、患者さんの自己判断による服薬に危険を感じるOTC医薬品」が「ある」と回答した医療機関が76%にのぼり、具体的な医薬品名やその理由、実際の治療遅れによる重症化事例などが多数報告された。さらには医薬品の乱用、いわゆる「オーバードーズ」の危険性も高まる。
国民医療費が増大する中で保険医療を守るために「セルフメディケーションが解決策の一つ」と尾崎氏は主張するが、そもそも日本は医療などの社会支出に対する国や企業の支出が他のOECD諸国に比べて少ない。保険医療を守るというのであれば、高齢社会に見合う社会支出を行うために国の医療費抑制策こそ見直すべきである。
我々は早期発見・早期治療で国民の命を守ってきた世界に誇る日本の医療を守るために、医療費抑制のためのセルフメディケーション推進に反対する。
2025年11月27日
大阪府保険医協会
第4回理事会








