患者の命に関わる予算、拙速な審議は許されない(理事会声明)
- 2026/4/9
- 注目記事
患者の命に関わる予算、拙速な審議は許されない
与党は米国とイスラエルによるイランへの軍事攻撃への外交対応などを理由に、「審議日程に予見可能性を高める必要がある」として、新年度予算案の質疑を打ち切り、衆院通過を急ごうとしている。しかし、国民生活に直結する国家予算の審議を十分尽くさないまま採決を急ぐ姿勢は到底容認できない。
衆院予算委員会での予算案審議は例年70時間台が一つの目安とされてきた。少数与党であった石破政権下でも92時間の審議が行われた。ところが今回、与党案の通りに進めば審議時間は50時間台にとどまり、2001年度以降で最短だった2007年度の66時間半をも大きく下回る見込みだ。国の基本方針を決める予算審議としては、あまりにも拙速と言わざるを得ない。
しかも今回の予算には、長期療養を続ける難病やがん患者にとって命綱ともいえる高額療養費制度の自己負担上限の引き上げが盛り込まれている。高額療養費制度は、重い病気や長期療養を余儀なくされた患者の医療費負担を一定額に抑え、誰もが必要な医療を受けられるようにするための社会保障制度の根幹である。とりわけがんや難病など継続的な治療が必要な患者にとっては、治療を続けられるかどうかを左右する「命綱」とも言える制度だ。
自己負担上限が引き上げられれば、患者や家族の経済的負担は確実に重くなる。治療の継続を断念せざるを得ないケースが生じるおそれもあり、受診控えや治療中断につながりかねない。医療費負担の増大は患者の生活そのものを直撃する問題であり、国会で十分な議論を尽くすことが不可欠である。それにもかかわらず、こうした重大な制度変更を含む予算について審議時間を大幅に削り、数の力で採決を急ごうとする姿勢は患者と国民生活を蔑ろにするものだ。
そもそも国会日程が窮屈になったのは、首相による衆院の「奇襲解散」が原因である。年明け直後の選挙は、予算審議や厳寒期の投票環境への影響を考え、これまで極力避けられてきた。それにもかかわらず今回の衆院選は、解散翌日から投開票まで戦後最短の16日間という超短期決戦となり、政策論争が十分深まったとは言い難い。
その反省もないまま、今度は予算審議まで急ごうとする。こうした姿勢は国会軽視と言わざるを得ない。国会は国民を代表する最高機関であり、予算審議は民主主義の根幹である。数の力を背景に審議を打ち切る政治が常態化すれば、日本の民主政治に深刻な禍根を残すことになる。野党が提案するように、暫定予算を組んだ上で、新年度予算をじっくり議論する方法もある。多様な意見をぶつけることで課題が浮き彫りになるはずだ。
国民の生活や命を左右する予算こそ、徹底した議論が必要である。政府・与党には、拙速な審議打ち切りをやめ、国民の声に向き合った真摯な審議の継続を行うことを強く求める。
2026年3月12日
大阪府保険医協会
第10回理事会








