【理事会声明】医療費抑制目的の安直なスイッチOTC化に反対する

医療費抑制目的の安直なスイッチOTC化に反対する

近年、医療用医薬品のスイッチOTC化が拡大し、その検討対象は抗インフルエンザ薬を含め、より専門性の高い領域にまで及びつつある。しかし、こうした動きは「利便性の向上」や「セルフメディケーションの推進」を過度に強調する一方で、医療の安全性・有効性、公衆衛生への影響を軽視する傾向が顕著である。

1.医師の判断なき服薬の重症化リスクとその結果責任

とりわけ問題なのはOTC化の根拠とされる「ニーズ」の捉え方である。
OTC化の是非を議論する「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」の資料においても、OTC化のニーズとして「利便性が向上する」「受診の手間が省ける」といった趣旨の記述がたびたび見られるが、これらは患者の主観的な利便性に依拠したものであり、医学的妥当性や安全性の裏付けを伴うものとは言えない。
本来、医薬品の使用は診断・重症度評価・投与判断と不可分であり、「受診を省略できること」自体をニーズとして肯定する発想は医療の質を損なう危険な前提である。
実際に協会が2025年に実施した「OTC薬、セルフメディケーションに関するアンケート」でも「バファリン、ロキソニン飲み過ぎの胃潰瘍」、「ロキソニン錠を自己判断で倍量服用し、急性腎不全」、「総合感冒薬による尿閉やめまい」、「漢方薬にて肝障害」など、自己判断による服薬によって副作用や重症化による受診が一定程度あることが報告されている。
そして、OTC薬のパッケージには「長期間の連続服用は避け、症状が改善しない場合は医療機関を受診してください」との注意書きがあり、最終的な結果責任が医療機関に丸投げされているという側面もあり非常に問題だ。

さらにOTC薬で深刻な副作用が出たとしても、その症状と薬の服用との因果関係を客観的に証明することは難しく、PMDAによる医薬品副作用救済制度などが受けられなくなるリスクもある。このような因果関係の証明まで患者の自己責任とすることにも問題がある。

2.感染症治療薬は個人の問題にとどまらず、公衆衛生上のリスクに直結する

この間にタミフルのスイッチOTC化のパブリックコメントがあった。この点、感染症治療薬の使用は単なる利便性の問題ではなく、患者の生命と感染症対策の質に直結する問題である。
医師の診断を介さない自己判断による使用が広がれば、誤使用や受診遅れが増加し、重症化や医療機関の負担増大につながることは避けられない。
さらに、こうしたOTC化の拡大は薬剤耐性や副作用リスクの増大を招く。事実、タミフルの薬剤耐性は既に問題になっている。
不適切な使用は薬剤の有効性を損ない、公衆衛生上の重大なリスクになりうる。

3.「医療費」に着目した短絡的判断はやめるべき

こうした議論の背景には「受診を減らすこと」や「医療費抑制」を目的化し、その手段としてOTC化を推進する政策的発想がある。
しかし、必要な受診の機会を縮減することは、結果として重症化や医療費の増大を招くおそれがあり、極めて短絡的である。また、早期受診・早期治療を旨とする国民皆保険制度の形骸化にもつながりかねない。

医療用医薬品のスイッチOTC化については、個別薬剤ごとの安全性評価にとどまらず、医療提供体制、公衆衛生、医療資源管理の観点から抜本的に見直される必要がある。
とりわけ感染症領域に関わる薬剤については、医師の診断と管理の下での使用を原則とすべきである。

政府および関係機関に対し、国民の生命と健康を守る観点から、スイッチOTC化の拡大について慎重かつ科学的根拠に基づいた再検討を行うよう強く求める。

2026年5月28日 大阪府保険医協会第14回理事会

              
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