コロナ禍での五輪開催は困難―組織委らは中止の決断をするべき

7月の東京五輪開催を控え、国内外で懸念が拡がっている。4月23日に大阪を含め4都府県に発令された3回目の緊急事態宣言は、5月21日までに計10都道府県に対象拡大している。しかし、コーツ国際オリンピック委員会(IOC)副会長は、緊急事態宣言下でも五輪開催可能と表明した。

サンフランシスコ・クロニクル紙は、ワクチン接種が進んでいない中で「五輪は開催されるべきではない」と掲載し、ワシントン・ポスト紙は、バッハIOC会長は開催国を食い物にする「ぼったくり男爵」と批判した。また、ニューヨーク・タイムズ紙は「五輪が強行される主な理由は3つ。カネ、カネ、カネだ。カネのほとんどはアスリートではなく、大会を運営、放映、スポンサーする人々に流れこんでいる」と指摘し「中止する時がきた」と掲載した。

日本の新聞五大紙が東京五輪スポンサーで、キー局全ては放映する立場にあり、巨額の広告収入を見込み、開催の機運を盛り上げようとしているが、5月17日の朝日新聞社の世論調査を見ても、「中止」が43%、「再延期」が40%、「今夏に開催」は14%と開催反対が大勢となり、開催するとしても「無観客」が59%と過半数を占めた。こうした声も受け、ついに朝日新聞は5月26日に「五輪中止を求める」と掲げた社説の掲載にも至っている。

4月28日にバッハIOC会長、パーソンズ国際パラリンピック委員会(IPC)会長、橋本聖子組織委員会会長、丸川珠代五輪担当相、小池百合子東京都知事が参加する「5者協議」が開催され、6月に観客数を判断することで合意した。

組織委員会は、大会期間中の選手や関係者の行動規範となる「プレーブック第2版(4月28日発表)」を基に、岡部信彦感染症担当内閣官房参与を座長として専門家ラウンドテーブルを開催した。選手と大会関係者は、入国前後や期間中の定期的なPCR検査に加え、厳しい外出制限も設けて外部との接触を遮断する「バブル」方式で運営されることになった。選手とコーチだけでなく、彼等が立ち入るエリアで活動する大会関係者にPCRを毎日実施するため、検査回数は1日最大で7万件以上と読売新聞は報道した。IOCはファイザー社等から2万人分のワクチン提供を受け、選手と大会関係者に予防接種が実施される見込みだが、選手が立ち入るエリアで活動するボランテイアは一部を除き提供されない。

本紙連載の「これでいいのか?東京五輪」で、本間龍氏は「インバウンド効果が消滅した今、五輪貴族のための『五輪もどき』は中止すべき」と主張した。バッハ会長はIOCからだけではなく、サマランチJr副会長が社長で、オリンピック関連動画の配信と放映権を管理する「オリンピックチャンネル」社からも巨額の報酬を得ている。

また、首相動静で頻回に面会している三浦博史選挙プランナーは、「五輪開催できれば大会後に衆院解散し、与党圧勝の可能性が高い」と展望している。

原発事故は非制御下で、熱中症より放映権を重視し、厚労省の発表する1日当たりの日本全体のPCR検査能力は約20万件で、5月末時点で1回目のワクチン接種を終えた高齢者の割合は約1割程度に留まっている。その現状でさらに、組織委員会は、選手用の指定病院を合計30カ所確保する方針を示した。医療者から見れば、五輪開催は困難としか言いようがない。

感染拡大、医療ひっ迫を招くことになる東京五輪・パラリンピック開催は極めて困難であることを、IOCとIPC、政府、東京都、組織委員会は認め、中止の決断をするべきである。


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