普及進まぬ〝かかりつけ医〟機能 厚労省は「24時間要件」の再考を

保険診療 虫めがね No.66

厚労省は診療報酬改定のたびに「かかりつけ医機能の推進」を重点課題として取り上げてきましたが、厚労省の想定する「かかりつけ医機能」とは何でしょうか。

2020年改定で新設された診療情報提供料Ⅲは「かかりつけ医機能を有する医療機関等と他の保険医療機関が連携することで、質の高い診療が効率的に行われることを評価する」としています。

この「かかりつけ医機能を有する医療機関」とは、点数の規定では「地域包括診療料」「地域包括診療加算」「小児かかりつけ診療料」「在宅時医学総合管理料又は施設入居時等医学総合管理料(在宅療養支援診療所・支援病院に限る)」のうち、いずれかの届出を行っている医療機関と定めています。

ここで挙げられている診療報酬に共通しているのは連絡受付体制や往診体制の確保といった「患者への24時間対応」です。厚労省は医療機関の「かかりつけ医機能」について「24時間対応」を重視していることは明白です。

患者は24時間対応を重視していない

では、患者が望む「かかりつけ医」像とはどういったものでしょうか。

厚労省は2019年に、医療機関の患者を対象にした「かかりつけ医機能に関する意識調査」を実施しました。この調査では、機能強化加算を届出している医療機関と、届出をしていない医療機関に分けて集約がされています。

この調査の中で「かかりつけ医に期待する役割」が質問されました。機能強化加算を届出している医療機関の患者からの回答を見ると「どんな病気でもまずは相談に乗ってくれる(約61%)」が最も多く、次いで「必要時に専門医、専門医療機関に紹介してくれる(約51%)」「これまでの病歴や家族背景等を把握してくれている(約44%)」と続きます。

その一方で、厚労省が「かかりつけ医機能」として重視する夜間・休日対応については、「夜間や休日であっても、体調が悪くなった場合に連絡できる(約26%)」「夜間や休日であっても、緊急時に受け入れるか、受診できる医療機関を紹介してくれる(約22%)」と低くなっています。

つまり、機能強化加算を届出している医療機関の患者であっても、24時間対応をそこまで重視していない事を物語っています。

多くの医療機関にとって「24時間対応」が負担に

それでは医療機関にとって24時間対応はどういう意味を持っているでしょうか。

日本医師会が2017年にまとめた「かかりつけ医機能と在宅医療についての診療所調査」では「在宅医療を実施する上で特に大変なこと」の回答として「24時間の往診体制をとること(約74%)」が最も多く、次いで「医師自身の体力(約69%)」「24時間連絡を受けること(約66%)」と続きます。

また、大阪府保険医協会が2019年に行った「開業医の働き方調査」では、5人に1人の開業医が過労死ラインを超えて働いている実態が分かった他、開業歴に関わらず、4~5割の医療機関が在宅医療に取り組んでいないことが明らかとなっています。

こうした結果から、厚労省が重視する「24時間対応」が、過労に苦しむ医療機関の大きな負担となり、在宅医療の普及を阻む要因になっていると考えられます。 

24時間対応と「かかりつけ医機能」は別に評価すべき

医療機関にとって患者への24時間対応は非常にハードルが高い一方で、患者にとって期待する「かかりつけ医機能」の中では重要な位置を占めていません。24時間対応が可能な医療機関については「かかりつけ医機能」と切り離した評価を行う必要があります。

また、「24時間対応」がネックとなり地域包括診療加算等の届出を行なっていなくても、患者に対して「かかりつけ医機能」を発揮している医療機関は数多く存在しています。そうした医療機関の「かかりつけ医機能」については何ら評価できていないことも忘れてはなりません。

真の地域包括ケアシステムを構築できる体制に向けて

厚労省が「かかりつけ医機能」と「24時間対応」を結びつける理由としては、医療費削減を目的とした入院ベッドの削減から起こる在宅患者の急増に対して、在宅医療の質を名目上担保する狙いが考えられます。しかし、24時間対応がハードルとなり、「かかりつけ医機能」も普及しないとなれば本末転倒です。

保険医協会は、外来患者が在宅医療へスムーズに移行するために必要なことは「診・診連携」や「病・診連携」、そして「多職種連携」の充実を始めとした「在宅医療に取り組むハードルを下げる」ことであると訴えてきました。

厚労省は評価の重点を多職種連携の充実・発展に移し、地域で患者を支える真の「地域包括ケアシステム」構築に向けた診療報酬体系を早急に確立すべきです。


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