COVID-19が炙り出す不作為 的確な情報開示と早急な対策が求められる

世界保健機関(WHO)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行は世界的大流行(パンデミック)に相当すると表明した。安倍首相の「臨時休校を求める要請」から、準備なく休校が始まり、医療現場に戸惑いと混乱が生じている。未知で不確実な行政活動では、「するべきではないことをする」作為過誤と「するべきことをしない」不作為過誤の2つの過誤が生じる。

COVID-19を巡っては、的確な疫学的調査や情報開示や指示ができないなどの不作為が炙り出され、医療や行政や社会に混乱を招いている。

COVID-19 の原因ウイルスは、遺伝子情報の多くが重症急性呼吸器症候群(SAR S )ウイルスと一致し、SARS-CoV-2と命名された。SARS-CoV-2は、インフルエンザウイルスと同じく一本鎖RNAウイルスで、膜表面に冠状に並ぶスパイクタンパク質が、人の肺・腸管粘膜に広範囲に分布するアンギオテンシン転換酵素2(ACE2)を標的に結合し、細胞内に取り込まれる。

細胞内でmRNAとして機能し、ウイルスを複製し、エキソサイトーシスにより細胞外に放出される。高齢者や基礎疾患のあるハイリスク群で、発症1~2週間後にサイトカインストームを起こし、急性呼吸促迫症候群(ARDS)に進展する。mRNAの合成を阻害するアビガンや肺炎早期でのシクレソニド吸入剤が治験されている。

迅速診断キットは未開発で、核酸合成酵素連鎖反応(PCR)検査が鍵となるが、2月末時点での日本のPCR検査実数は、1日900件と不自然に少ない。予算やマニュアルに縛られての不作為やオリンピックを控えての検査抑制であれば、医療と倫理の両面で問題がある。

SARSは2002年11 月に、中国広東省で最初の患者が報告され、8096人の症例が報告され、774人(9.6%) が死亡した。1707人(21%)が医療従事者の感染で、医療施設で集団発生した。「隔離と検疫」を用いて収束され、2003年7月に終息宣言が出された。

MERS(中東呼吸器症候群)は、2012年に初感染例が報告され、昨年までの感染者は2468人、死亡者は851人(34.5%)と異常に多い。2015年5月には中東から韓国に帰国した男性が、換気の不充分な一般病床に入院し、2日間で病棟全体に拡散し、最終的には186人が感染し38人が死亡した。

186人の内訳は入院患者70人、お見舞い54人、医療従事者26人(17%)だった。情報開示の遅れと、標準予防策の不徹底と換気の不充分が原因とされた教訓から韓国では議員立法で対策を法制化し、COVID-19では民間検査機関に依頼し、屋外やドライブスルーで、日本からも試薬を輸入して1日1万3千人のPCR検査を実施している。

日本では、立法府の不作為から緊急時の民間検査は法制化されておらず、国立感染研究所や都道府県の地方衛生研究所などの行政検査のみだが、安倍首相は緊急会見でPCR検査の保険収載と簡易検査の開発を表明した。医療用マスク・手袋・ゴーグル・手指消毒剤・防護服や消毒用アルコール等の供給停滞の不作為から医療機関を守る対策が必要になる。

COVID-19は、昨年11月に中国科学院武漢病毒研究所に近接する市場で初感染が発生したと推定され、中国での感染者数は8万人を超え、死者は3千人に達した。医療従事者の感染率は4%で、最初に報告した眼科医や若い医師が死亡している。

ダイヤモンドプリンセス号は、1月20日に横浜港を出港し、25日に香港で下船した乗客が、30日に発熱し、2月1日にPCR陽性が確認された。3日に帰港し、5日から感染隔離が開始されたが、18日に神戸大学岩田健太郎教授がDMATとして乗船した時点で、「グリーンゾーンとレッドゾーンがぐちゃぐちゃなカオスな状態」とyoutubeに告発し話題となった。

1人の感染から乗員乗客3711人中、PCR陽性696人(発症308人)、死亡7人に感染拡大し、下船後の陽性・死亡も報告されている。感染隔離の初動とPCR検査の遅れ、ゾーニングや飛沫核感染対策、下船後対策の不徹底などの不作為が指摘されている。

旧日本軍の「失敗の本質」は、官僚的原理と人脈と驕慢に基づき行動し、失敗から学び直すことがなく、合理性の追求ができなかった事とされるが、COVID-19で炙り出された行政府や立法府の不作為にも通じる。SARSでの教訓から、2002年に中国疾控中心(C-CDC)が、2003年に韓国疾病管理局(K-CDC)が設立された。

 日本の国立感染研究所や各都道府県の地方衛生研究所は研究機関であり、疾病管理できる権限や人員は限られる。米国疾病管理予防センター(CDC)と同等同格の人材と予算が確保され、的確な情報収集・解析・開示と指示ができるJーCDCの設立が必要と考える。


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