高額薬剤の薬価―原価算定の透明化と算定方式の見直しを

本年5月に開催された中医協で、CAR-T細胞療法に用いるノバルティス社のキムリア点滴静注の薬価が、過去最高の1患者当たり3349万3407円で了承された。対象となる疾患は急性B細胞系リンパ性白血病とびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)で、国内治験で1回点滴の全寛解率が82.0%と画期的な新薬だが、25歳以下の若年者限定で推定患者数は年間261人とされる。

高薬価となった理由は、中医協「新医薬品の薬価算定方式」の原価計算に加え、有用性加算35%と稀少性疾患に対する市場性加算10 %が付加された事にもあるが、外国平均薬価の0.75 ~1.25の範囲に収める外国平均価格調整にある。米国では効果が現れた場合にのみ約5200万円の成功型報酬が支払われ、英国では昨年9月に費用対効果が見合わないと一旦承認が見送られたが、本年に抗がん剤基金を通して、成人におけるDLBCLに約4120万円の薬価が認められた。

後述する中国でのCAR-T細胞 療法の薬剤費用と名古屋大学での独自製造費用約100万円は参考にされず、企業広告に依存するマスコミ各社は報道もしない。DLBCLは悪性リンパ腫の中で最も頻度が高く、日本における総患者数は約2万1千人で、オプジーボと同様に、今後適応が拡大すると思われる。

薬価原価には巨額な企業買収費も含まれる

CAR-T細胞療法とは、患者末梢血由来のT細胞を採取し、遺伝子を改変してキメラ抗原受容体(CAR)を発現させたT細胞(CAR-T細胞)を患者の静脈内に投与するがん治療法である。緊急時に十分対応できる医療施設で、幹細胞移植に関する十分な知識・経験を持つ医師のもとで使用し、全症例を対象に使用成績調査を実施などの条件が付き、対応できる国内医療機関は190施設程度とされる。

5月の中医協では、全国健康保険協会の吉森俊和理事から、原価計算方式に関する疑問と費用対効果評価に用いるデータについての質問がされたが、厚労省薬剤管理官からは「回答を避けたい」との答弁に留まった。

世界の悪性疾患治療薬市場は、オプジーボに代表される免疫チェックポイント阻害薬とCAR-T細胞療法薬に牽引され、年平均10~13%で成長し続け、2022年には2000億ドルに達すると言う。HCV治療薬で有名なギリアド・サイエンシズ社は2017年にCAR-Tを手がけるカイトファーマ社を119億ドルで買収し、本年に武田薬品工業は英国シャイアー社を460億ポンドで買収した。薬剤原価には、巨額の企業買収費用も含まれる。

薬価算定に関しては、『全国保険医新聞』本年4月15日号に、「超高額がん治療続く―薬価算定に透明性を」との見出しで特集記事が掲載され対談での小島勢二名古屋大学小児科名誉教授の発言で「北京小児病院に4人の白血病患者のCAR-T療法を依頼し受けたが、製剤費用は約100万円で、その後に名古屋大学でも独自にCAR-T製剤を開発し、約100万円で製造できる」とあった。原価算定の透明化と算定方式の見直しは、喫緊の課題と考える。


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