財源の応能負担は可能か


logo第10回 財源の応能負担は可能か

sekino 下関市立大学経済学部 教授 関野 秀明

これまで私たちは一連の「社会保障改革」に対し「進行中の給付削減中止3.2兆円」「緊急に必要な社会保障充実10兆円」「欧州福祉国家と比較12~41兆円」という3つの目標を想定して対案と財源を検討してきました。そして財政赤字の原因が税収不足にあること、上位1%の大企業金融資産270兆円、上位2%富裕層金融資産241兆円を「0.6~2%程度」政府部門に移すことを考えています。

法人税の課税ベースを圧縮する租税特別措置

それでは、「大企業に課税すると海外に逃げてしまう」ということは本当でしょうか。図1は、日本企業の海外進出要因の調査結果です。

海外進出要因上位は「現地需要」「関係企業の進出実績」であり、「税制」は8.9%にすぎません。

20160605-図1

たしかに、日本の法人税率は平成26年現在34.62%で、米国40.75%、ドイツ29.59%、フランス33.33%、英国23%、中国25%の中では高く見えます。しかし、日本は課税ベースを圧縮する租税特別措置が多数(欠損金繰越控除2.3兆円減税、受取・海外子会社配当益金不算入2兆円減税、その他1.5兆円減税、2012年度)存在し、大企業が実質負担している税率は、資本金100億円以上企業平均19.5%、連結法人9.5%、トヨタ26.1%、日産16%、三菱電機9.5%など、低すぎる実態があります。租税特別措置や更なる法人減税は中止すべきです。法人税を減税しても企業の国際競争力強化にはつながりません。

2013年度財務省「法人企業統計」において、「①日本の全製造業販売高は394.2兆円」でした。その「②経常利益合計は21.7兆円」で、「③法人税納税額は5.84兆円(実質税率27%)」でした。ここで財界の要求どおり減税すると「④法人税5%減税1.08兆円」減税することになります。しかし、「④1.08兆円」は「①394.2兆円」の0.27%に過ぎません。要するに法人税率5%減税は製造業製品価格をわずか0.27%引き下げる力しかありません。100万円の日本車が99万7300円になるだけです。

証券税制は主要先進国最小の課税

また、「富裕層に課税すると海外に逃げてしまう」というのも本当でしょうか。

図2は、主要先進国の証券税制を比較しています。日本は、配当益、譲渡益(売買利益)共に主要先進国最小の課税(税率20%分離課税)です。米国36.7%や欧州26.375~60.5%と比べてもかなり低い税率です。しかも日本は、平成25年度まで証券特別減税で10%しか課税せず、26年度以降はひとり年間100万円×5年の非課税口座(NISA)設定という新たな証券優遇税制を導入しています。

「まずは主要先進国並みに大企業、富裕層に増税する」、そこから財政再建と社会保障充実の展望がひらけてきます。

20160605-図2

(おわり)

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