萎縮診療に繋がる圧力を懸念する 参院審議わずか2日で「医療関連法案」採決


健康保険法や社会保険診療報酬支払基金法など、16本の法律を一括で改定する「医療保険関連法案」が、4月16日に衆議院で可決された。この法案には、審査支払機関改革、マイナンバーカードによるオンライン資格確認の導入、医療と介護のデータの連結解析とその利用など、医療や診療のあり方に大きな影響を与える内容が盛り込まれている。この中でも支払基金改革の問題を取り上げてみたい。

この度の計画では、現在全レセプトの65%に留まっているコンピュータによる審査を2020年度までに90%まで拡大してコンピュータ審査のみで完結させることを目指している。コンピュータ審査拡大に伴う業務効率化のため、現在47都道府県にある審査委員会を本部直轄とし、レセプト内容を点検する事務を全国10カ所程度の事務センターに集約する。

地域の独自ルール廃止で均一的な審査にする方針

コンピュータ審査が90%にもなると機械的、画一的な審査になることは否めず、患者の個別性や地域の特性を生かした審査が継続されるかどうかは疑問である。審査委員会を本部直轄にすることについては、地域の独自ルールをなくして均一的な審査にする方針であるという。しかし現在支払基金は、子ども医療費助成やひとり親家庭医療費助成など、自治体ごとに異なる医療費助成事業を受託しており、府県をまたいで支部が集約されることで丁寧な対応ができなくなる恐れがある。

また支払基金の業務に、レセプトや特定健診の情報収集、データ分析を追加するという。厚労省、国保中央会、支払基金が2017年7月に策定した「データヘルス改革推進計画」では、「現在活用されていない種々の健康・介護のビッグデータを、ICTを活用して連結、分析し、新たな付加価値を創出する」と謳っている。レセプトデータを有効に活用すべきと提言しているのである。審査に基づく迅速で適正な支払いを履行する機関が、ビッグデータを活用して医療費抑制あるいは企業による利用を推進する機関となることが懸念される。

さらに支払基金の財政基盤である保険者からの手数料はレセプト枚数でこれまで決まっていたが、審査の中身に応じて階層化することが計画されている。査定内容の多いレセプトほど手数料も上がることは否定されておらず、保険者と支払基金で直接交渉となっているため、高い手数料のレセプトに対し、保険者がそれに見合った査定をするべく圧力をかけてくることも有りうる。支払基金側にも高い手数料を得られる高額レセプトを熱心に査定する意欲が高まる可能性がある。

地域差を無くすという名目の画一化は医師の裁量権を奪うものであり、査定が厳しくなれば萎縮診療につながる。ビッグデータの利用に至っては、患者のプライバシーの侵害になる。

当該法案審議は参議院に移ったが、わずか2日という衆議院よりも短い審議期間で採決された。保険医協会は法案の問題点を指摘し、注意喚起するとともに実施をさせない取り組みを進める。

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