社会保障財源、どこから取ろうとしているのか


logo 第4回 社会保障財源、どこから取ろうとしているのか

sekino 下関市立大学経済学部 教授 関野 秀明

前回私は、上位1%の大企業が持つ金融資産270兆円と上位2%のお金持ちが持つ金融資産241兆円、合計511兆円もの巨額の富の中からわずか0・6%、3兆円を社会保障給付に移転することで、医療、介護、福祉という国民の人権・生存権を守ることを提案しました。 このように負担能力に応じて課税し生存権を守る必要に応じて充分に給付する財政政策は「所得の垂直的分配」と呼ばれます。反対に安倍政権は、負担能力のない庶民に消費税増税を課し社会保障財源とする「所得の水平的分配」政策に囚われています。

消費税増税分の大半は 既存財源との置き換え

しかし、ここで2つの重要な事実が存在します。 第一に重要な事実は、政府の宣伝とは正反対に、消費税増税の大半が社会保障充実に使われないことです。図1は、消費税率引き上げにより予想される増収の使途を示しています。2014年度の税率8%による増収は5兆円です。そのうち1・3兆円は、「社会保障制度安定化財源」と言いながら、既存の財源(所得税や法人税から社会保障費に充てられている部分)と消費増税の財源とを単に置き換えるだけです。同様に2・95兆円は、「基礎年金財源の充実」と言いながら、2000年代後半に所得税・住民税の定率減税を廃止する庶民増税で生み出した既存財源と消費増税の財源とを単に置き換えるだけです。また2000億円は消費税率引き上げにより社会保障経費も3%増税分の経費が必要となる手当てです。

図1:消費税増税の本当の使い道

図1:消費税増税の本当の使い道

結局、わずか5000億円だけが社会保障充実財源ということになります。2017年度の税率10%による増収は9兆円強です。ここでも14年度と全く同様に、4兆円強が「社会保障既存財源の置き換え」、3兆円が「基礎年金既存財源の置き換え」、4000億円が「消費増税に伴う経費」であり、わずか1・8兆円だけが社会保障充実財源ということになります。

社会保障充実をはるか に超える国民負担増

そして第二に重要な事実は、14年度5000億円、17年度1・8兆円という社会保障充実をはるかに超える社会保障国民負担増、給付削減が実行されていることです。図2は、安倍政権がすすめる社会保障国民負担増、給付削減のメニュー一覧を示しています。これらの国民負担増、給付削減の総計は3兆2550億円にものぼります。これでは消費税を増税してもその税収は全く庶民には分配されないことになります。逆に、私が考えたような3兆円規模の「所得の垂直的分配」さえ実現できれば、現在実行されつつある社会保障の削減も消費税の増税も全て中止することが可能だということです。

図2 安倍政権が進める社会保障負担増・給付減一覧

  • 要支援1、2訪問介護、通所介護保険はずし:2000億円
  • 年金280万以上の介護自己負担2割:750億円
  • 介護施設食費、居住費補足給付削減:700億円
  • 介護報酬2.27%引き下げ:2300億円
  • 後期高齢者医療保険料特例廃止:800億円
  • 70−74歳医療費自己負担2割:4000億円
  • 入院時食事療法保険はずし:5000億円
  • 年金特例水準解消:1.2兆円
  • 年金マクロ経済スライド実施:0.5兆円/年

総計3兆2550億円

12月5日号につづく

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