福島原発事故から11年―いまだに残る復興までの諸課題

福島原発事故から11年になる。今、福島で問題になっていることは、①小児甲状腺がんの多発、②高濃度汚染水の海洋放出、③中間貯蔵という名の永久貯蔵施設に搬入した放射線汚染物質の拡大、④危険な廃炉作業と原発労働者の被ばく、⑤復興という名の被ばく強制と棄民政策などである。

県内外への避難者は、今でも5万人以上といわれ、震災関連死は2300人、自殺者は120人に上る。

小児甲状腺エコー検査は4巡目に入っているが、甲状腺がんは疑いを含めて260人。このうち男性が100人、女性は160人である。一般の甲状腺がんの男女比は、1対3~5程度だが、福島では1対1.6であり、特異性が指摘されている。なお、220人が手術を受け219人ががんと確定した。さらに27人が集計されてないことも分かり合計287人となった。

このがんの多発を、UNSCEAR(国連科学委員会)や福島県は、検査による過剰診断で、事故との因果関係はないと報告している。しかし、放射線量の地域差と、がんの発生数が一致すること、甲状腺がんの男女比がチェルノブイリと同じように男性に多いことなどから過剰診断説は否定されている。その他、多くの根拠から小児甲状腺がんの多発は放射線起因性があると考えざるをえない。また、甲状腺がん健診を縮小させようとする動きがあるが、継続するべきである。

また、福島原発の敷地内には毎日140トンの汚染水が発生し、タンクに貯めているが、間もなく満杯になる。これをALPSにより放射性物質を出来る限り取り除き、希釈して、来年春ごろ海岸から1km先のパイプラインから海洋投棄する予定である。しかし、いくら薄めてもトリチウムを含むことに変わりない。トリチウムが大量発生する世界中の核施設周辺で小児白血病や先天異常などが増えており、漁協など地元の反対、韓国や中国の反対もある。海洋投棄以外の方法を模索すべきであろう。

さらに、原子炉内に残る880トンもの燃料デブリも問題で、取り出しには40年かかるとされている。しかし、全体像がまだ把握できておらず、極めて高い放射線を発生させ続けている。取り出しは本当に可能なのか疑問が残る。そして、厳しい環境で働く原発労働者は1日4千人とされているが、高い被曝状況が持続する中、全ての労働者の健康管理や疫学調査の徹底が必要である。健康管理手帳の交付、生涯にわたる健診と医療の保障が必要だが、下請け企業では依然として低い待遇のままである。

また、「年間20mSv以下は安全」という根拠のない基準で「強制送還」が行われ、帰還困難区域では除染なしで避難指示解除が行われている。さらに、県外から当該地域に対して移住する場合は支援金が出るが、元々その地域で暮らし生業を奪われた人への支援は不十分なままだ。その結果、帰還を諦めた人、県によって避難者として数えることを打ち切られた人などを含め、約10万人以上が故郷を追われたままである。

福島原発事故後11年たっても諸課題が山積して復興とは程遠い状態である。


保険医新聞掲載

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