生活保護不当減点 潜む“保険給付範囲の縮小”の狙い


mushimegane

保険診療 虫めがね No.40

近年では超格差社会が出現し、問題視されるようになってきました。

低・中所得者層には増税がされ、さらには消費税の負担が重くのしかかっています。年金、健康保険、介護保険の保険料は引き上がる一方で、年金の給付開始は65歳以降に延ばされ、給付額は引き下げられ、医療・介護保険の一部負担金は年々引き上げられています。

また雇用においては、非正規率が大幅に増え、ワーキングプアが拡大し、平均年収も低くなっています。以前のような終身雇用制は、ほぼ壊滅しつつあります。

医療機関の窓口では、未収金が問題となっている上に、保険証が頻繁に変わることが多くなり、それに伴いレセプトの返戻も頻発するようになりました。

80年代以降「高齢化社会を迎え、財源がもたない」ということを理由に社会保障費は、いつも問題視されてきました。しかし、一方で大企業の法人税や1億円を超える高所得者層は減税され続けています。

社会保障費の増大を理由に導入、そして引き上げられてきた消費税の大半は、大企業などの法人税減税と高所得者への減税に使われてきたことが明らかになっています。

〝保険給付範囲の縮小〟まずは生保患者から

前置きが長くなりましたが、80年代以降、社会保障費の中でもとりわけ公的医療費の削減は、中曽根内閣の臨調・行革以降、「医療費亡国論」のスローガンの下「永遠のテーマ」の如く、ずっとやり玉にあげられてきました。

その内容が前述の保険料、患者負担引き上げの歴史であったわけですが〝保険給付範囲の縮小〟もかねがね狙われてきたものです。ビタミン剤、シップ薬、保湿剤などの保険給付外し、リハビリの医療保険での算定制限等々です。

今、その〝保険給付範囲の縮小〟が、医療内容にまで大きく踏み込まれようとしています。それは、生活保護患者への訪問診療の回数を月2回の算定回数を1回に減点、精神科で行っている精神疾患との関連を精査するための甲状腺機能検査の減点などに表れ始めています。

そもそも訪問診療は先生方の診療に基づいた計画により行われるものです。療養の計画が妥当なものであるのかについては「無茶な計画」でない限り、一般の方と同じような計画になります。生保の方だけ、月2回必要であるにもかかわらず月1回しか訪問診療が認められないとなれば、明らかな医療差別です。

先の国会を通過し10月から実施される「生活困窮者自立支援法等」の一部「改正」法では、医師の裁量権を制限する「原則、後発医薬品により投薬を行うこと」とされたこともまた明らかな医療差別と言えます。

コンピュータチェック 医師の裁量権を制限か

生活保護において必要な医療が狭められれば、次に待っているのはそれらの「基準」においての一般の方に対する審査への拡大です。

支払基金、国保連合会では「基金改革」実現に向け、既にコンピュータチェックを開始していることが公開されており、およそ〝8万6千のチェック項目〟が示されています(医科、歯科、調剤、DPC)。根拠としては、告示・通知、事務連絡(疑義解釈資料等含む)、療養担当規則、医薬品添付文書、材料価格基準、審査情報提供事例が示されています。チェックするポイントとしては、回数、対象外、背反、包括、用法・用量、数量、医学的必要性、その他としています。

このシステムを活用すれば、算定できる範囲の縮小は簡単に、しかもなし崩し的にできるのではないかと思われます。医師の医学的判断にまで踏み込むような給付範囲の縮小は、医師の裁量権を制限するものです。

保険医協会では、顕著になってきている生活保護の減点も含めた不当な減点について、会員の先生方に協力いただき具体事例を集約し、対策を図っていくことを検討しています。

是非とも情報をお寄せいただきますようお願いいたします。

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